りぼんの読書ノート

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秘密(ケイト・モートン)

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2011年。イギリスの国民的女優のローレルは、母ドロシーの死を前にして、見知らぬ侵入者を母が刺殺した50年前の事件の真相を追い始めます。事件は正当防衛で片付いたのですが、幼かったローレルは、侵入者が母の名を呼んだのを聞いていました。彼女は、それを誰にも話さなかったことが、ずっと気にかかっていたのです。

手がかりは、母が大事にしていた一冊の本の中にありました。献辞を署名した「ヴィヴィアン」とは、古い写真の中で若き日の母と並んで写っていた女性なのでしょうか。調査を進めるうちに、ヴィヴィアンとは、戦時中のロンドンで母が奉公していた屋敷の向かいに住んでいた若妻であることがわかります。しかも、母が刺殺した人物は、ヴィヴィアンの夫である作家ヘンリーだったのです。

物語は過去に飛びます。裕福な生活に憧れ、貧しいカメラマン・ジミーとの結婚に踏み切れないでいたドロシーは、なぜロンドンを去ることになったのでしょう。そして、ロンドン空襲で犠牲になったというヴィヴィアンとはどのような関係だったのでしょう。そこにヘンリーは、どう関係していたのでしょう。

現在進行形で語られる50年前のドロシーの行動と、それを資料や口承から追いかける現代のローレルの探索が、交互に語られていきます。ひとつの謎を解決すると、別の謎が現れ、最後には予想外の真実が浮かび上がってくる構成は、最後まで論理的です。そして最後には、厳しい時代をせいいっぱい生きてきた女性たちの姿が、浮かび上がってくるのです。読後感の爽やかな作品です。

2015/8