りぼんの読書ノート

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荒神(宮部みゆき)

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宮部さんの「怪物小説」です。といっても、「ウルトラ・シリーズ」や「ゴジラ」のような物理的な怪獣ではありません。描写される容貌や破壊力は怪獣クラスですが、本質的には妖しい存在なのです。どちらかというと百物語シリーズと近しい物語なのでしょう。

元禄時代の東北の山間、互いを敵視する2つの藩の国境に現れた怪物は、一夜にして村を壊滅させてしまいます。軽々と国境を越えた怪物には、砦に籠る精鋭の武士たちも歯が立たずに全滅。人々は、こんなスーパー怪物とどのように戦うことができるのでしょう。また、この怪物の正体は何なのでしょう。

永津野藩サイドでは、藩主側近として権力を振るう弾正や、心優しき妹・朱音。彼女を慕う朴訥な村人たちや、正体不明の用心棒・宗栄ら。香山藩サイドでは、病から癒えたばかりの小姓・直弥に、謎の絵師・圓秀。山里の猟師・源爺と孫の蓑吉ら。そして暗躍する幕府の隠密。人々は力を合わせて、怪物に立ち向かおうとするのですが・・。

いかにも宮部さんらしい、人々の思いが因果を断ち切るような展開になるのですが、本書に関しては少々不満が残りました。怪物の描写に力を割きすぎたのでしょうか。ラストの展開に、少々ご都合主義の匂いを嗅いでしまいました。また、怪物退治と「生類憐みの令」の関係のくだりも、不要だったように思います。あまり広がりませんでしたからね。

2015/2