りぼんの読書ノート

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キル・リスト(フレデリック・フォーサイス)

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1970年の『ジャッカルの日』から1996年の『イコン』まで、国際謀略小説の第一人者であった著者が絶筆宣言を覆してから10年。76歳になりましたが、本書でも現代的なテーマに挑戦し、健在ぶりを見せつけてくれました。何よりも、自らが開拓した分野で、後継者たちと真っ向から競争する意気込みが素晴らしい。

 

タイトルの「キル・リスト」とは、ホワイトハウスに存在するといわれる、法的手続きを必要とせずに処刑対象とされた超危険人物のリストのこと。もちろん、そんなリストの存在は認められていませんが、アル・カイダ幹部の殺害情報などを聞くと、ありえるようにも思えてきます。

 

ネット上で人々の憎悪を掻き立ててテロへと導く、狂信的イスラム主義者の「説教師」を追う、「追跡者」ことキット・カーソン。天才的オタクハッカーエアリアル」を発掘してネット戦を挑むとともに、モサド工作員やイギリスの特殊部隊とも協力して「説教師」を追い詰めていくという物語。

 

もちろん派手な展開なのですが、そこをリアルに思わせてしまうのが、元祖の力量です。ソマリア海賊の実態と人質解放交渉の状況や、無人偵察機の活用など、現代的な要素も盛りだくさんです。ユダヤ人の中で唯一の黒人であり、アフリカ大陸の黒人の中でも唯一のユダヤ人である「エチオピアユダヤ人」の存在などは、本書で初めて知りました。調べてみると、二重の差別を受けているようで、これだけでも一冊書けるほどの題材ですね。

 

2014/11