りぼんの読書ノート

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贋作と共に去りぬ(ヘイリー・リンド)

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サンフランシスコを舞台にして、優秀な贋作画家の腕を持つアニー・キンケイドを探偵役とする「美術関係ライトミステリ」のシリーズ第1作です。

伝説の贋作師である祖父ジョルジュに仕込まれた腕前は封印し、疑似塗装師(フォーフィニッシャー)の仕事で生計を立てているアニーに、キュレーターである元カレから相談が持ち込まれます。美術館が買い入れたカラヴァッジオの真贋判定をして欲しいというのですが、やっぱり贋作。しかも書いたのは祖父の友人の贋作師アントンらしい。直後に美術館の職員が殺害され、元カレは失踪。アニーも、否応なしに事件に巻き込まれてしまいます。

ジュルジュの手による2枚目の贋作カラヴァッジオ。行方不明になった貴重なデッサン。さらに起こる殺人事件。こんな時こそ祖父ジョルジュのアドヴァイスが欲しいのに、なかなか連絡が取れません。そもそも祖父も事件の関係者なのでしょうか。

登場人物も多彩です。嫌味な元同僚に、ポップなアシスタント。謎のイケメン私立探偵に、スタジオの家賃値上げをもくろむハンサムな大家。いかがわしい画商に、気位の高い美術館長。シリーズ第1作ですから、レギュラーになっていく人物紹介も必要なのでしょう。

ミステリとしての完成度はそれほどでもないと思うのですが、贋作絡みの薀蓄が楽しいですね。真作か贋作かで絵画の価値が変わるのかどうか。ナチスに自作のフェルメールを売りつけた男は、非難と賞賛のどちらに値するのか。著者は、それぞれ歴史家と疑似塗装師の姉妹だそうです。得意な分野が生かされていますね。

2014/2