りぼんの読書ノート

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ソハの地下水道(ロバート・マーシャル)

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1943年。ナチスに占領されたポーランドのルヴフ。ユダヤ人狩りを逃れて地下の下水道へと逃げ込んだユダヤ人たちを匿ったのは、意外な男たちでした。彼らは下水修理のかたわら、空き家となったユダヤ人の家から金目のものを盗み出している小悪党のポーランド人・ソハだったのです。

暗闇、悪臭、汚物、寒気、増水の危険に満ちた下水道という空間では、内部構造に詳しく、外から食料などを手配してくれる支援者なしでは、潜伏生活など不可能。はじめは金目当てでユダヤ人たちを支援していたソハでしたが、彼らと接する中で親身になっていき、最後には命がけでかくまうことになっていきます。

下水道生活は14ヶ月に及びます。地下で息絶えた者、逃亡して捕えられた者、出産後たちまち亡くなった嬰児・・精神的にも肉体的にも限界が迫る中、ソ連軍も街に近づいてくるのですが・・。

本書は実話に基づいており、ユダヤ人を助けたポーランド人の存在という美談なのですが、それだけでは済まないところが人種問題の難しいところです。戦後すぐに交通事故で死亡したソハの葬儀の席で「神の罰が当たったんだ。ユダヤ人なんか助けるから」の声があがったとのこと。ユダヤ人に次いでナチスから迫害されていたポーランド人にも、ユダヤ人への差別意識があったのですね。映画では、そのあたりはどう処理されたのでしょうか。

2014/2