りぼんの読書ノート

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ルパン、最後の恋(モーリス・ルブラン)

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ルブラン没後70年にして発見された未発表の遺稿が、2012年に出版されたのが本書です。物語は完結しているが推敲不足であることや、他の作品との齟齬が見られること(ルパンの年齢など)が指摘されていますが、ファンとしては純粋に楽しみましょう。

ルパン40歳(彼のキャリアから見ると50歳近くなっているはずですが)。泥棒の枠を超えてフランス国益のために数々の貢献をしたルパンは、すでに警視総監や内務省などの国家機関から信頼を得ている紳士になっています。

そんなルパンが、父親のレルヌ大公の突然の自殺によって孤児となった娘コラを支援します。彼女は実はマリー・アントワネットとイギリス王室の血統に連なる高貴の生れであり、莫大な遺産の受け取り手であるのみならず、次期イギリス王妃となるべき女性だというのです。ルパンは、コラを巡って蠢き始めた国際的陰謀から彼女を守り抜き、姿なき強敵を破ることができるのでしょうか。

ルパンが思うままに活躍できたのは、第一次大戦以前の「古き良き時代」です。国家帝国主義のエゴが直接ぶつかり合うようになって、価値観が「浪漫」から「覇権」に、「理想主義」から「現実主義」に変わった時代においては、窮屈そうなのです。ルパンもホームズも自国の利益への貢献を求められてしまうのですから。やがてその役割は、偉大な個人ではなく、諜報機関に取って代わられることになるのですが、本書でも既にその萌芽が見られますね。

多くの女性と艶聞を重ねてきたルパンですので、親を知らない子どもや、親が認知していない子どもも多くいそうです。カリオストロの復讐では、カリオストロ伯爵夫人に育てられた息子に復讐されそうになったルパンでしたが、本書では子どもたちに助けられました。その末裔に「ルパン三世」もいるのですね・・たぶん。

2013/12