りぼんの読書ノート

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砂の覇王 1 ~4(須賀しのぶ)

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全27巻の大作である「流血女神伝」の第1部帝国の娘の続編は、勃興紀のトルコをイメージしたエティカヤ王国に舞台を移します。

ルトヴィア王国の皇子の身代わりの立場を捨てて太子宮カデーレを脱出した主人公の少女カリエと、彼女に好意を持った教育係のエディアルド。北方の隣国ユリ・スカナ王国を目指す途中で罠にはまり、なんとエティカヤ国に奴隷として売られてしまう。バルアン王子への献上品として後宮にあがったカリエは、「妃妾」の座を目指すものの無実の罪を着せられて投獄。ハーレムも後宮も大奥も、どこでもドロドロなのは一緒ですね。

兵士として軍に売られたエドは実力を発揮して、バルアンに仕える将軍ヒカイに認められ昇進していくのですが、後宮にいるカリエとは思うままに連絡もとれません。2人とも、第2王子バルアンと第1王子シャイハンによる、現国王の後継者争いに巻き込まれていくことになりそうです。

一方でルトヴィアの王位に就いたドミトリアスは四公に対抗するためにユリ・スカナ王国の第2皇女グラーシカに求婚。牢獄から脱出を試みた結果、男装して小姓となっていたカリエも、婚礼式に招かれたバルアンに従ってルトヴィアに向かうのですが、そこでまた彼女の運命は大きく変わっていくのです。

3王国を巡る歴史的背景が徐々に明らかになってきました。ユリ・スカナ王国のモデルはエカテリーナ2世時代のロシアのようです。女帝バンディーカに追い落とされた前国王の娘ビアンがバルアンの側室になっているなど人間関係は複雑ですが、まだ「流血女神」の全貌は明かされていません。亡国ザカールのラクリゼやサルベーンはどう動くのか。本人も知らないカリエの正体は何なのか。興味は後半に繋がれます。

著者は「1巻1コスプレ」などと言ってます。かなり楽しんで書いていますね。ローマや中国の史書などの「どこかで聞いたようなエピソード」も目立ちますが、全体としてひとつの独特の世界を作り上げています。

2013/9