りぼんの読書ノート

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夜に生きる(デニス・ルヘイン)

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重厚な歴史大作であった運命の日の続編は、ダニー・コグリンの弟ジョーを主人公としたクライム・ノヴェルでした。あれから10年後の、禁酒法時代末期のボストン。市警幹部の息子でありながらギャングの手下になっていたジョーは、強盗に入った賭博場で運命の女性エマと出会って恋に落ちます。しかしエマが対立組織のボスの情婦だったことから、ジョーの運命は狂い始めるのでした。

強引な銀行強盗、警官の死亡、裏切りによる逮捕、エマとの別離、父の力を借りての減刑、陰惨な刑務所生活、父の死、イタリア系マフィアとの出会い。そして出所後、ジョーは旧友とともにフロリダで自分の帝国を築いていくのでしたが・・。

ラストになって「暴力は暴力を生み、そうして生まれた暴力の子供はお前の元に帰ってくる」と、父親が生前ジョーに語り聞かせていた言葉が重みを持ってきます。自分は夜の世界のルールをかいくぐれると過信していたジョーとても、決して例外ではありませんでした。

本書のテーマは、成功者の家庭に育った息子がなぜ「夜の世界に生きる」ことを選んだのか、それが彼に何をもたらしたのかということですね。空虚を埋めるためにエマへの想いを抱き、それがまた新たな空虚を生み出すという負の連鎖を見ると、暴力と空虚は双子の兄弟のように思えてきます。

本書は3部作シリーズの第2作めにあたるとのこと。最終の第3部は、誰のどのような物語になるのでしょうか。第1次世界大戦直後から始まった物語は、第2次世界大戦前夜で締めくくられるのでしょうか。ボストンを去ったダニーと、おそらくフロリダを去るであろうジョーが、LAで再会する物語になるのではないかと思うのですが、いかがでしょう。

2013/8