すべてを見とおしてしまう稀代の
陰陽師・
安倍晴明と、心優しき笛の名手・
源博雅が、平安の都で起こる怪事件を解決する人気シリーズは、今年で25周年を迎えたとのこと。はじめからずっと、テーマもトーンも変わっていませんし、「偉大なるマンネリ」を極めた作品と言えるかも・・。
「銅酒を飲む女」 男が通っていた女の親族が、熱く焼けた銅を男に飲ませようとしています。女の正体は何なのでしょうか。
「桜闇、女の首」 雅楽寮の主と言われた男の娘が、満開の桜の元で琴を弾いているうちに消えてしまいました。
清明は花びらに残った振動を博雅に聞かせて、娘が弾いていたのは父の遺作だったとつきとめます。
「首大臣」 若き
藤原道長の依頼は、
太政大臣である父の兼家が、首だけになってしまったという奇妙な依頼でした。兼家は道満のはからいで
羅生門の鬼と双六勝負をしたというのですが・・。
「道満、酒を馳走されて死人と添い寝する語」 顎が外れたために死んでsまったという男の葬列に紛れ込んだ道満が、家族に酒を所望するかわりに奇妙な約束をします。男の死因は何だったのでしょうか。
「めなし」 藤原為継が
糺の森で目を失ったのは、蜘蛛の姿に身を窶していた女性の仕業でした。その女性の正体は誰だったのでしょう。
糺の森には強い力があるんですね。
「新山月記」 白
楽天の詩を吟じながら人を喰らう虎が
四条大路に現れます。虎の正体は、
文章博士になれずに酒で身を持ち崩した男でした。虎が自作の詩として吟じるのが白
楽天の詩というのが悲しい。
「牛怪」 流れ星が落ちた所にいた女の正体は、牽牛を追って地上に降り立った織姫だったのです。彼女の正体をつきとめるため、
清明の依頼で、道満は女の乗る水瓶に入って天帝のもとへ・・。
「望月の五位」 東三条殿の南の築山に夜になると現れる男の顔は欠けていました。「早う望月にならばや・・」とと一人ごちながら徘徊する男の正体を
清明が暴きます。
「夜叉婆あ」 猟師の兄弟を追う夜叉の正体は、死んだ母親が身を変えた姿でした。母親を討つこともできずに荒れ寺に逃げ込んだ兄弟を道満が助けます。
シリーズ最新作では、時として晴明らと対立する
蘆屋道満の活躍が目立ちます。著者もだんだん、彼のキャラが気に入ってきたのでしょうか。
清明にはそぐわない「汚れ仕事」もできますしね。
2013/3