りぼんの読書ノート

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北の舞姫-芙蓉千里Ⅱ(須賀しのぶ)

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明治末期から大正時代の満州で、芸妓への道を歩む少女フミの物語芙蓉千里の続編です。どうやら3部作となるシリーズの第2巻のようですね。「続編」には残念な作品もよくあるのですが、本書もそんな一冊。

ロシア革命とシベリアでの内戦、日本軍のシベリア出兵という激動の時代を背景にハルビンでナンバーワンの舞姫となった芸妓・芙蓉ことフミの、舞踊と恋愛に悩み苦しむ様子が描かれるのですが、どこかぶっとんだ感が爽やかだった『芙蓉千里』と比較すると、最初から最後まで深みのない少女漫画的な物語になってしまいました。

かつて身を置いた娼館「酔芙蓉」はすでになく、独立した芸妓としてハルビンいちの舞姫と呼ばれるようになったフミでしたが、亡命ロシア貴族出身で一流バレリーナエリアナからも、パトロン黒谷貴文の異母弟で日本の芸妓を母に持つ若い武臣からも、「自己流で基本が出来ていない芸にすぎない」と酷評されてしまいます。

一方でフミのパトロンとなった男爵家の次男の黒谷は、フミを大切に見守っているものの、過去の悲恋を忘れられずに心の奥深くは閉ざしたままでいます。この2人は男女の関係になっていないんですね。フミ自身、ハルビン駅で涙の決別をしたはずの運命の男性・山村を忘れられずにいる様子。

フミは芸と恋に迷ったまま、エリアナの「瀕死の白鳥」に比肩しえる「鷺娘」の舞を完成させるため、シベリア奥地、大連、ウラジオストークへと、国境を越えて原野を駆け回るのですが・・。

ほら、少女漫画でしょう。悲劇の後で「神が降りてくる舞台」を経験したり、凍てつくシベリアの原野で倒れると馬賊となっている運命の人に偶然救出されたり、典型的おぼっちゃまの黒谷が自分の本当の気持ちに気づいたときには既に遅かったりと、あまりにもステレオタイプの展開。とはいえ、ラストで舞を棄てたフミの行く末は・・やはり気になるのです。^^

2012/2