りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

時の地図(フェリクス・J.パルマ)

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1896年のロンドンを舞台に、タイムトラベルをテーマにした3部構成の作品です。ロンドンでは「タイム・マシン」がブームになっていました。ひとつには、H・G・ウエルズが前年に発表した同名の小説が大ヒットしたためであり、もうひとつは、実際に2000年の未来を訪れて「人類と機械人形軍団の最終決戦」を目撃するとのツアーが大評判になっていたからなのです。

第1部は、富豪の息子アンドリューが8年前に時を遡り、切り裂きジャックに惨殺された恋人を救おうとする物語。ツアーを催行する時間旅行社は特定の未来にしか行けないとのことで、タイムマシンを発明したと噂されるウェルズの力を借りることにするのですが・・。

第2部は、ツアーで西暦2000年を訪れた際に出合った、機械人形軍団の王を倒して人類に勝利をもたらすシャクルトン将軍に恋してしまった上流階級の娘クレアの物語。19世紀ロンドンで将軍と再会したクレアですが、しょせん実らぬ恋。2人の仲をウェルズが取り持ちます。

第3部は、謎の武器で胸に大きな穴が開けられた死体の謎に挑むロンドンの警部の物語。捜査への協力を求められたウェルズは、まだ書き上げたばかりで誰も知らないはずの『透明人間』の冒頭部分が、現場の壁に記されていることを知って愕然。やがて第2、第3の殺人事件が起きるのですが、どの現場にも未発表小説の冒頭が・・。そこに届いた手紙には、彼自身の驚愕の秘密が記されていたのです。

「時の地図」とは、過去の修正によって生じるパラレル・ワールドの系統図のこと。果たしてタイムトラベルは可能とされているのか、それとも詐術にすぎないのか。最後まで目を離せない、仕掛けたっぷりの展開が続きます。この小説全体が、ウェルズに捧げられたオマージュですね。

2011/1