りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2024/7 Best 3

1.キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン(デイヴィッド・グラン)

サブタイトルは「オセージ族怪死事件とFBIの誕生」。1920年代のオクラホマ州で、居留区内の石油発見によって裕福になった先住民のオセージ族と関係者が、20数人も犠牲となった連続怪死事件の顛末を綿密に取材したノンフィクションです。その事件は、当時誕生したばかりの司法相省捜査局(BI)が合衆国全域の捜査権を持つFBIとして独立するきっかけともなったとのこと。圧巻の取材力で「真相」にたどりついた本書は、西部開拓史の汚点としてアメリカでも忘れられていた事件を現代によみがえらせてくれました。

 

2.モスクワの伯爵(エイモア・トールズ)

ロシア革命直後から30年以上もモスクワのホテルに軟禁された伯爵の物語」とのコピーには、あまり魅力を感じなかったのですが、『賢者たちの街』の著者による本書は、意外なことに「楽しい」作品でした。不条理な境遇の中で「自らの境遇の主人となる」ことに努めた伯爵の人生は、実り多いものになったのです。そして彼は、32年もの長きに渡った幽閉生活をどのように終えたのでしょう。「陶酔と哀愁に満ちた長篇小説」のエンディングは、痛快ですらありました。

 

3.雷鳥の森(マーリオ・リゴーニ・ステルン)

オーストリアとの係争地であったイタリア北部の山岳地帯出身で、ロシア戦線から奇跡の生還を果たした後は生涯故郷に留まり続けた著者の自伝的な短編集です。狩猟を通して大自然と対峙する厳しさと喜びが伝わる一方で、戦争の傷跡が感じられる物語群は、「簡素で力強い文体」で書かれ、「世界の深さと豊かさ」が表現されているようです。

 

 【次点】

・かけがえのない心(チョ・ヘジン)

・黒いピエロ(ロジェ・グルニエ

・海の仙人・雉始雊(絲山秋子

 

【その他今月読んだ本】

・ナカスイ!1海なし県の水産高校(村崎なぎこ)

・ナカスイ!2海なし県の海洋実習(村崎なぎこ)

・この村にとどまる(マルコ・バルツァーノ)

・黄金雛(今村翔吾)

・無双の花(葉室麟

紫式部本人による現代語訳「紫式部日記」(古川日出男

・限界ニュータウン(吉川祐介)

・紅霞後宮物語 中幕(雪村花菜)

ナポリの物語1 リラとわたし(エレナ・フェッランテ)

・三千円の使いかた(原田ひ香)

・ヒース燃ゆ(コルム・トビーン

・あなたのことが知りたくて 小説版韓国・フェミニズム・日本(チョ・ナムジュほか)

・恋ははかない、あるいは、プールの底のステーキ(川上弘美

・ホテル・カイザリン(近藤史恵

 

2024/7/30