りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ブリット=マリーはここにいた(フレドリック・バックマン)

著者は、スウェーデンで映画化され、トム・ハンクス主演でハリウッドでもリメイクされた『幸せなひとりぼっち』の原作者です。スウェーデン版の映画が非常に良かったので、本書も手に取ってみました。

 

63歳の主婦であるブリット=マリーは、浮気した夫のケントに腹を立てて家を飛び出したきたのですが、彼女は全くの世間知らず。少女時代は早逝した優秀な姉の影に隠れていたような存在であり、若くして結婚した後はずっと夫の世話をしてきただけの女性です。掃除や料理や洗濯は得意なものの、社会に出て働いた経験はなく、自分の意見を持ったことも求められたこともない反面、40年間同じ生活を繰り返していたために性格は頑固。そんなブリット=マリーが職業安定所に出かけ、さびれた田舎町ボーリにある閉鎖予定のユースセンター管理人の仕事を紹介されるのですが・・。

 

『幸せなひとりぼっち』は、妻に先立たれて孤独な老人が移民の隣人一家との触れ合いを通して再生していく物語でしたが、本書も同じような物語。試合に出るために誰でもいいから大人のコーチを必要としていた子供たちのサッカーチームのコーチになるよう頼まれたところから、彼女の再生物語が始まります。育ちも手癖も悪い子供や、仲間外れの移民の子供や、町のチームに入れてもらえなかった女の子などの寄せ集めチームとの関りが、彼女を変えていくのですね。偏屈者が揃っている村の住民たちも、次第に彼女に好意を寄せていきます。なんと老警官からは言い寄られる始末!

 

かなり都合のよすぎる展開ではあったものの、思った通り読後感の良い小説でした。意外だったのは、スウェーデンではイングランドプレミアリーグが大人気であること。田舎の村でもリバプール派とマンチェスターユナイテッド派がいがみあったりしているのですね。スウェーデンにもサッカーリーグはあるんですけど。

 

2023/6