りぼんの読書ノート

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あきない世傳 金と銀13 大海篇(高田郁)

宝暦元年(1751年)に浅草田原町に江戸店を開いた五鈴屋は、木綿を商う太物仲間の協力を得て、一度は断たれた呉服商いに復帰。身分の高い武家を顧客に得て豪奢な絹織も扱うことができるようになりました。手頃な品々を求める町人たちが気安く出入りできる雰囲気を維持するために、屋敷売りを専門とする新店を開業。吉原での衣裳競べ、歌舞伎役者や相撲興行とのコラボ、笄などの小間物を扱う菊栄との協力から生まれた商店街という発想によって、ビジネスは順風満帆に大海へと乗り出すことができたようです。

 

思わぬ人物の裏切りで苦境に落ちてしまうものの、本書は完結編ですので、ハッピーエンドはお約束ですね。気になるのは、妹の結との関係なのですが・・。

 

江戸時代の不況期にビジネスを拡大した幸の物語が生まれたきっかけは、後に松坂屋となる「いとう呉服店」の10代目店主となった宇多という女性を知ったことだそうです。五鈴屋という伊勢神宮に由来する店名や、浅草に江戸店を構えたことの意味を、やっと理解できました。シリーズ本編は本書で終わりますが、特別巻を2冊刊行予定だそうです。『みをつくし料理帖』と『あきない世傳』の2大シリーズを書き上げた著者の、次のテーマも気になるところです。

 

2023/5