りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2023/4 Best 3

1.反乱者(ジーナ・アポストル)

フィリピン人の作家兼翻訳者マグサリンが、アメリカ人の映画監督キアラから通訳を依頼されるところから始まる物語は、米比戦争をテーマとした重層的なメタフィクションでした。中心に据えられているのは、19世紀末の米西戦争の直後、フィリピン独立の約束を反故にしたアメリカが起こした大虐殺事件の記憶。キアラが準備した脚本と、通訳の範囲を超えてマグサリンが綴った脚本の優劣を競う中で、両者の物語の境界は消え去っていくようです。

 

2.女たち三百人の裏切りの書(古川日出男

平安時代後期、100年以上も前に亡くなった紫式部の怨霊は何を語るのでしょう。光源氏亡きあとの「宇治十帖」は改竄されていると恨みを述べる紫式部が綴った本当の物語とは、どのようなものだったのでしょう。物語の力を知る者たちが、自分たちの紫式部を擁して自分たちの物語を幻視する「古川日出男版・宇治十帖」は、とてつもない野心に満ちたパワフルな作品でした。

 

3.テルマエ・ロマエ 1-6(ヤマザキマリ

映画「テルマエ・ロマエ」は2作品とも見ているので、おおよその内容は知っていました。ハドリアヌス帝時代の古代ローマから現代日本にタイムスリップしてきた浴場設計技師ルシウスが、「平たい顔族」の風呂文化をローマの浴場建設に取り入れていく物語。「世界で最も風呂を愛しているのは、日本人と古代ローマ人だ」との発想から生まれた、唯一無二の作品です。原作のラストシーンは映画と異なっていますが。どちらもハッピーエンドです。南房館山の温泉旅館のコミックルームで読んだこともあり、心身ともに温泉を堪能した次第です。

 

【その他今月読んだ本】

・物語ウクライナの歴史(黒川祐次)

・ふたご(藤崎彩織

・ネットワーク・エフェクト(マーサ・ウェルズ)

・イクサガミ 天(今村翔吾)

・円 劉慈欣短篇集(劉慈欣(リウ・ツーシン))

・満漢全席(南條竹則

・会社を綴る人(朱野帰子)

ダ・ヴィンチの愛人(藤本ひとみ

・ルパンの帰還(横関大)

・ホームズの娘(横関大)

・寿宴(南條竹則

・民王 シベリアの陰謀(池井戸潤

・わたし、定時で帰ります。ライジング(朱野帰子)

・逃亡テレメトリー(マーサ・ウェルズ)

・地形で見る江戸・東京発展史(鈴木浩三)

・保護犬と暮らすということ(天然生活)

・ルパンの星(横関大)

・ルパンの絆(横関大)

・果樹園の守り手(コーマック・マッカーシー

・ちよぼ(諸田玲子

 

2023/4/29