りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

プラスチックの恋人(山本弘)

人形に愛情を抱く「ピグマリオンコンプレックス」をテーマとする小説は数多く書かれていますが、仮想現実と人工意識の発達は、人間と非人間の境界を曖昧化していくことで、新たな物語を創り出していくのでしょう。本書の舞台となっている近未来では、オルタマシンと呼ばれるセックス用アンドロイドとの疑似恋愛は、もはや普通のこととなっています。しかし少年や少女の姿形をした未成年型オルタマシンの登場は、社会問題化するほどの激しい議論を巻き起こしたのです。フリーライターの長谷部美里は取材のために、美しい12歳の少年形マシンのミーフと出会うのですが・・。

 

著名なSF作家であり、近年ではビブリオバトルと呼ばれる読書会をテーマとする作品も多い著者に、ロリコン趣味があることは有名です。これまでの作品に登場したアイ、詩羽、キャンディ、アリス、ぴあのらは全員ロリ系ですからね。本書はきわどいテーマであるために、敢えて成人女性が少年型アンドロイドを愛する物語としたのでしょうが、それでもやりすぎですね。未成年ポルノは、やはり禁断のテーマなのでしょう。

 

それでも人工意識が抱くであろう「感情」に踏み込んだ点は評価できるように思えます。さまざまな面で人間の感情とは異なるのは当然ですが、もっとも異なる点は固体の記憶や体験が、集団で共有、コピーしえることに由来するのでしょう。人工意識の「個性」をテーマとする作品も数多いのですが、そのレベルまで技術がたどり着くことは夢物語にしか思えません。従って、人間がオルタマシン個体に感じる愛情は錯覚にすぎないのです。しかし人間どうしの愛情だって、いや人間の全ての感情だって錯覚の上に成り立っているのかもしれません。その意味で「ヒトはヒトならざるものと愛し合うことができる」のです。

 

2023/3