りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

竹光始末(藤沢周平)

著者初期の時代小説6作からなる短編集の内訳は、武家ものが4作と市井ものが2作。武家もののうちの2作の舞台が海坂藩であり、表題作は映画「「たそがれ清兵衛」にも使われたエピソードです。鶴岡市に行く機会があったので直前に読んだのですが、あまり参考にはなりませんでした。

 

「竹光始末」

仕官の推薦状を持参して訪れた浪人に、海坂藩の御物頭は当惑します。新規召し抱えはとっくに終わっていたのですから。それでも浪人の潔さに惹かれた御物頭は、上意討ちの討手という機会を与えてくれたのですが、彼の剣は竹光だったのです。武家勤めの過酷さも、浪人暮らしの厳しさも、辛いものです。

 

「恐妻の剣」

妻の尻に敷かれている婿は、子供達からも見くびられているようです。しかし剣の使い手だった彼に、藩の運命を左右しかねない密命が下ります。職場での評価と家族内の評価は一致しませんね。

 

「石を抱く」

博奕の世界から足を洗って店者となっている男は、店の若女将を苦しめているヤクザな弟に釘を刺そうとするのですが、全てが裏目に出てしまいます。強盗殺人の容疑で拷問にかけられた男は、いったい何に耐えているのでしょう。男の意地とは厄介なものです。

 

「冬の終りに」

慣れない博奕で大勝ちしてしまった職人が、胴元の配下から付け狙われてしまいます。追われた先で偶然出会ったのは、胴元に因縁を持つ男を夫に持つ女性だったのですが・・。珍しくハッピーエンドのようです。

 

「乱心」

妻女に不義の噂が立った剣友の心配は、杞憂では終わりませんでした。しかし問題の真相は別のことろにあったのです。これは男を惑わす美女の物語なのでしょうか。それともインセル男の物語なのでしょうか。

 

「遠方より来る」

海坂藩士のもとに仕官を求めて転がり込んできた浪人は、かつて大阪の陣で知り合った武士でした。いかにも豪快な印象の浪人は、藩の上士から受けが良かったのですが、実はかなり残念な男だったのです。珍しくコミカルな作品でした。

 

2022/11