りぼんの読書ノート

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獅子の門1 群狼編(夢枕獏)

1984年から2014年にかけて書き綴られた格闘小説です。「スーパーバイオレンス小説」とキャッチコピーがつけられたように壮絶な格闘シーン描写が特徴なのですが、それだけではありません。その格闘にはロマンを感じるのです。後に書かれた柔道創成期の物語『東天の獅子』よりも完成度は低いのですが、まだ30第の著者の勢いも感じます。

 

主人公は4人の少年です。海辺の町で孤独に生き、自らの無力を嘆く中学生・芥菊千代。暴力団組織の末端構成員として鉄砲玉の任務を負わされる飢えた獣のような竹智完。美しい獣のような精気を発散させる信州松本の美貌の不良高校生・志村礼二。元プロレスラーの父に育てられた心優しい巨漢の少年・室戸武志。彼らはそれぞれに、世界を放浪する陳家太極拳の達人・羽柴彦六と出会い、格闘の道を歩み始めます。もうひとり、志村礼二の同級生で貧しい父子家庭出身の加倉文平がいるのですが、どこかの時点で主人公群から外れるようです。

 

シリーズ第1巻の本書は、羽柴彦六が久我伊吉との死闘の後に、旅先で出会って忘れられない印象を残した5人の少年のことを思い出す場面で終わります。「これらの男たちが出会っていく運命にあることを、まだ彦六は知らなかった」わけですが、第2巻から物語は動き始めるのでしょう。

 

2022/10