りぼんの読書ノート

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アメリカン・スナイパー(クリス・カイル)

著者は、アメリカ海軍特殊部隊SEAL所属のスナイパーとして、4度にわたってイラク戦争に従軍し、160人の敵を仕留めた人物です。米軍史上の最高記録保持者だそうですが、非公式の記録としては遥かに多い数字も伝えられています。味方からは「伝説」と尊敬され、敵からは「悪魔」と恐れられたカイルが、2009年に除隊した後に著した自伝が本書です。

 

テキサスで生まれ育った生い立ち。SEALを志した経緯。厳しい軍事訓練と選抜過程。イラクでの作戦活動と仲間への思い。愛妻タヤとの出会いと家族への思い。愛国心と忠誠心と戦争に蝕まれていく心の内。そういった内容が率直すぎるほどに綴られており、現実に戦争を戦っている国家の兵士としては理想的な人物なのでしょう。その一方で、イラク国家やイラク人に対する評価や表現については明らかに差別的であり、これが問題にならないアメリカ社会には、やはり危うさを感じます。

 

本書は発売後すぐにベストセラーとなりましたが、1年後の2013年に著者がPTSDを患う元海兵隊員に射殺されるという衝撃的な事件が起こったことで、メガヒットとなりました。2015年にはクリント・イーストウッド監督によって映画化されてヒットし、アカデミー賞で作品賞を含む6部門にノミネートされるに至っています。未見ですが、この映画が戦争賛美なのか、反戦的なのか、意見が分かれていたことは記憶に残っています。

 

2022/9