りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

紅きゆめみし(田牧大和)

八百屋の娘・お七の放火が起こった翌年、吉原から「お七様」が化けて出たという噂が広まり出します。吉原一の遊女・紅花太夫が稲荷神社の境内で見かけた、奇妙な子守唄を唄う幼い娘「七」とは何者なのでしょう。紅花太夫の依頼を受けた、人気女形の荻島清之助こと新九郎は、「七」の正体を探し始めるのですが・・。

 

さまざまな仕掛けを得意とする著者らしく、本書も一筋縄ではいきません。紅花太夫や新九郎に対する妬みや恨みも渦巻く中で、行動も制限されている2人の探索は思うようには進まないどころか、紅花太夫自身が何かを隠しているようなのです。そもそも17歳で処刑された八百屋お七が、幼女姿で現れることが不思議なのです。先が見えにくい物語でしたが、最後は綺麗に着地します。

 

本書のことを、俳人宝井其角と絵師・英一蝶の友情を描いた『酔ひもせず』と『彩は匂へど』のシリーズと思っていましたが、微妙に異なっていました。紅花太夫は『彩は匂へど』の脇役で登場していましたし、出版社も同じなのですが、これは別物ですね。著者によると、はじめは紅花太夫の相棒役を室井其角で考えていたものの、どうにも収まりが悪いので新たに新九郎を登場させたとのこと。2人とも天才肌なのですが、「ナイーブで善良」な其角よりも図太くて腹黒いキャラが必要だったようです。

 

2022/7