りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

幻想商店街(堀川アサコ)

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この世とあの世のあわいに存在する場所を描く「幻想シリーズ」も9作目になりました。これまでの郵便局、映画館、日記店、探偵社、温泉郷、寝台車、蒸気船に続く境界エリアは商店街。ここ「世界のヘソ商店街」の中心にあるのは一軒のギャラリーであり、そこに飾ってある油絵「一本道」が2つの世界を繋ぐ道なのです。ところがここに立ち退きの危機が迫ってきます。新しくできた大型モールへ移転するように、市から迫られた商店主たちは悩んでいました。

 

そんなとき「交差点のアカリさん」という怪談が広がり始めて、商店街の危機が加速されてしまいます。あの世から訪れる無害な霊たちには慣れている人にとっても、祟りをもたらす怨霊は怖いものなのですね。文具店を営む祖父とともに立ち退きに抵抗している少女ホタルも、アカリさんに遭遇してしまって脅えます。しかし彼女は商店街の危機を救うために、アカリさんの謎を解決しようと決意。現在は市役所職員となっているかつての天才霊能少女と、商店街に恨みを抱く悪徳不動産会社の社長が、怪談と立ち退きの背後にいたことをつきとめるのですが・・。

 

毎回趣向を凝らしてくれるシリーズですが、他の作品とのリンクも楽しいポイント。本書には美少女アイドル然とした女神・狗山比売が郵便局の赤井局長を従えて登場。わずか数年前に商売繁盛を目的として建てられた別宮なのに、本物の女神様が時々訪れるようになっちゃったんですね。まあ境界繋がりなんですが。今回はホタルが狗山比売に捧げた50円の賽銭が功を奏したというお話でした。次はどんな趣向になるのでしょう。

 

2022/4