りぼんの読書ノート

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紅霞後宮物語 第0幕5(雪村花菜)

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古代中国を思わせる架空の歴史の中で、伝説の軍人皇后となった関小玉の生涯を描くシリーズは、皇后になってからの本編と、皇后になるまでの前編からなっています。「第0幕」は前編なのですが、いよいよ本編に近づいてきました。もっとも著者はこちらが「本編」で、第1幕以降が「後日談」との感覚が強いそうですが、混乱を避けるために、このレビューの中ではこちらを「前編」として通します。

 

軍人として功績をあげ出世の階梯を上りつつあった小玉でしたが、前巻『第0幕4』で片腕だった黄復卿が戦死。しかもそこには宮廷と軍を巻き込んだ陰謀があったようです。本来であればこの巻は陰謀の究明に宛てられるのでしょうが、そこは本編『第12幕』に持ち越されました。「過去の先に未来があって、未来はときどき過去を呼び起こすこともある」との著者の言葉通り、後になって大きな意味を待ってくる人物がチョイ役で登場するにとどまっています。

 

そのかわりに本書で描かれるのは、小玉が大出世していく過程です。事件の決着のつけ方に対して軍人としての筋を通し、苦手な書類仕事も副官の周文林の助力を得て丁寧にこなし、戦闘よりも得意とする困難な土木工事を見事になしとげ、要するに上からの評価が高まるわけです。そして小玉の大恩人であった王敏之大将軍の戦死という悲劇が起こり・・。

 

小玉が皇后となった経緯は本編で説明されていますので、ラストに近づいてきた前編では将軍としての活躍が描かれていくのでしょう。最後は陰謀などではなく、豪快な軍略や戦闘で締めて欲しいものです。

 

2022/4