りぼんの読書ノート

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偽姉妹(山崎ナオコーラ)

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叶姉妹のことはほとんど知らないし、阿佐ヶ谷姉妹のこともTVで見る情報しか持っていないけれど、どちらもビジネス上だけの偽姉妹なのに、いかにも本物の姉妹のように見えてしまいます。阿佐ヶ谷姉妹によって発想を得たという本書は、実の姉妹よりもまったくの他人と姉妹になることを選んだ女性の物語。

 

あるとき3億円の宝くじが当たった真面目で地味な35歳の正子は、当選金で風変わりな家を建て、イケメンの夫・茂と息子の3人で暮らしていましたが、茂の浮気で離婚。シングルマザーになった正子は、実の姉でる衿子と、実の妹である園子と同居生活を開始。しかしコンプレックスの克服を押し付けてくる姉や、正義を振りかざす妹との共同生活に息苦しさを感じ始めてしまいます。正子は姉も妹も好きなのですが、もっとふんわりした関係が好みなのです。

 

そして正子は奇想天外なアイディアを思いつきます。結婚に離婚があるのなら、姉妹だって別れたり、新たに作ったりしていいのでは・・と。そして彼女は実の姉妹と縁を切り、家に転がり込んできた気の置けない友人である百夜とあぐりを姉妹として選ぶのでした。「たとえこじれても血の繋がった家族との関係は切れない」という常識を、「偽姉妹」という言葉ひとつでさらっと崩してしまい、「気が合う」ということで繋がる関係性のほうを選ぶ軽やかさは、いかにもナオコーラさんらしい作品です。賛否両論ありそうだけど、新しい発想や視点には感心させられてしまいます。

 

2021/11