りぼんの読書ノート

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大天使はミモザの香り(高野史緒)

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近世ヨーロッパを舞台とする「音楽スチームパンク」とでも言うしかないSFジャンルを生み出した著者の2019年の作品ですが、本書はミステリであってSF的な要素は含まれていません。

 

平凡なアマチュアオーケストラ団員である、アラフォー地味美女の光子と、新米高校生の拓人がとんでもない事件に巻き込まれてしまいます。きっかけはアマオケのスポンサーが企画したコンサートイベントでした。その目玉はヨーロッパの小国君主が保有するバイオリンの名器「ミモザ」の披露だったのですが、時価2億円の名器が密室から消え去ってしまったのです。

 

しかも周囲は怪しい人物ばかり。ミモザの持ち主であるラ・ルーシェ大公アルベール。その優秀すぎる女性秘書のイヴォンヌ。パトロンのマダムであるまりや。実直なヴァイオリン職人であるはずの安住。イケメンコーディネーターの神崎。これは全員がグルとか、ヴァイオリンを分解して隠したとかの、有名ミステリで用いられたトリックの再現なのでしょうか。しかもアルベールは光子をお忍びデートに誘って「ローマの休日」ならぬ「東京の休日」を希望。いやアラフォー地味女子には無謀すぎると思うのですが・・。

 

トリックよりもありえない偶然のほうが気になってしまいましたが、光子や拓人や、その周囲のアマオケ団員たちはいいキャラでした。また出番もあるのかもしれません。「アマチュアとは愛好家のことである」の言葉くらいしか印象に残らない作品だったのですが。

 

2021/10