りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2021/8 Best 3

1.理不尽ゲーム(サーシャ・フィリペンコ)

30年近くも独裁政権を敷き続けている大統領のもとで「ヨーロッパ最後の独裁国家」として非難されるベラルーシという国について、私たちは何を知っているでしょうか。「昏睡状態に陥って目を覚ます気配がない祖国」の現状を憂いて執筆された本書が「いつかきっと時事性を失うことを心から願う」との序文は、著者の心の叫びです。事故に遭って10年間昏睡した主人公は、意識を回復した時に何を見たのでしょう。そして国を出る決意をした主人公を襲ったさらなる悲劇とは、どのようなものだったのでしょうか。

 

2.恥さらし(パウリーナ・フローレス

1988年にチリのサンディエゴで生まれた若い著者は、ピノチェト政権後の政治的な民主化が、その一方で貧富格差の拡大をはじめとするさまざまな問題を起こしてきたことを知っている世代です。だから本書は伝統的な南米文学とは異なり、日本や他の国々とも決して無縁ではないテーマを扱っている「世界文学」なのでしょう。一読しただけでは理解が及ばない説明不足感も魅力に思えてしまう短編集です。

 

3. 図書館大戦争(ミハイル・エリザーロフ)

まるで有川浩の大ヒット作品のパクリのようなタイトルですが、内容は全く異なります。旧ソ連時代の無名の社会主義小説家の著作が奇跡的な魔力をもたらすことが知られ、残り少ないオリジナル本をめぐって、コレクターたちが血みどろの闘争を始めるのです。旧ソ連時代へのノスタルジーが意味を持つようになり、混乱期の信仰対象にまで高められた時に、人々はどのような行動をとるのでしょう。寓話的な作品ですが、テーマは重く深いのです。

 

【その他今月読んだ本】

・逃げ出せなかった君へ(安藤祐介)

・中島ハルコはまだ懲りてない!(林真理子

・満ちみてる生(ジョン・ファンテ)

・京都伏見のあやかし甘味帖 6(柏てん)

ペール・ギュントイプセン

・邪眼(ジョイス・キャロル・オーツ

ビリー・バスゲイト(E・L・ドクトロウ)

・人形の家(イプセン

樅の木は残った山本周五郎

・傲慢と善良(辻村深月

・雷にうたれて死んだ人を生き返らせるには(ゲイル・アンダーソン=ダーガッツ)

・剣樹抄(冲方丁

・輪舞曲(ロンド)(朝井まかて

翼竜館の宝石商人(高野史緒

・御不浄バトル(羽田圭介

・冬姫(葉室麟

・木曜日にはココアを(青山美智子)

・スクラップ・アンド・ビルド(羽田圭介

・マルドゥック・アノニマス 6(冲方丁

・ウィッシュガール(ニッキー・ロフティン)

日蓮佐藤賢一

・劇場(又吉直樹

 

2021/8/30