りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

たまもかる(篠綾子)

f:id:wakiabc:20210531095540j:plain

万葉集歌解き譚シリーズ」の第2弾です。前作『からころも』に登場した、日本橋の薬種問屋・伊勢屋に奉公する12歳の助松、賀茂真淵先生から和歌を学んでいる17歳の伊勢屋の娘・しず子、謎の陰陽師・葛木多陽人の3人が新たな謎に挑戦。助松の父親・大五郎の正体と、助松の意外な出自は明らかになっていますが、2人はこれまで通り伊勢屋の手代と小僧で居続ける道を選んだようです。しかし製薬知識を持っている大五郎が、そのことを伊勢屋の主人に隠し続けているのは何故なのでしょう。

 

今回の事件の発端は、しず子の歌の師匠である賀茂真淵の家に泥棒が入ったことでした。将軍家重の弟である田安宗武にご進講した際に誤って持ち帰ってしまった、自分のものではない万葉集が盗まれてしまったのです。そこには、仮名だけで書かれた万葉和歌12首と、干支や漢数字が記された不可解な符帳が書き込まれていたとのこと。頼りになる葛木多陽人はそこから、幕府を揺るがす大きな陰謀を読み取ります。そして多陽人の許に、まだ若い田沼意次が訪れてきたのですが、それは陰謀と関わりがあるのでしょうか。

 

前巻同様に、万葉和歌の意味を理解することで助松が成長していく過程は魅力的ですが、万葉和歌と事件との関係性が薄いところが気になります。ミステリというより、万葉集の魅力を伝える作品として読んだ方がいいように思えます。

 

2021/6