りぼんの読書ノート

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二百十番館にようこそ(加納朋子)

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20代後半にしてニートネトゲ廃人の主人公は、突然両親から捨てられてしまいます。決定的だったのは「親の年金で暮らして、親が死んだら生活保護」と言い放った言葉だった模様、手切れ金としてもらったのは、伯父が遺してくれたという離島の大きな建物と当面の生活費としての50万円。しかもその離島は半端なく辺鄙なのです。母島からさらに離れた子島にあって、人口はわずか17人。もちろん平均年齢はめちゃくちゃ高い。

 

それでもネトゲはやめられず、手元資金の大半をネット回線を引くために使い切ってしまいます。生き延びるための解決策として思いついたのは、ニートを住まわせて生活費を入れてもらうこと。かくしてニートにちなんで「210番館」と名付けた建物に集まったのは、T大出なのにコミュ障のヒロ、医療事故で産婦人科を廃業したBJ、かなりヤバそうなマッチョのサトシ。

 

まあ一種のシェアハウスですね。普通なら引き籠りのニートばかりが集まっても何もできそうにないのですが、老人ばかりの離島では貴重な若者たち。島の老人たちに世話になりながら、力仕事などを頼まれることもあり、彼らの生活は少しずつ広がっていくのでした。

 

新たになる場合には65歳以下との制限があるために亡くなった簡易郵便局長の代わりを頼まれたり、「アイナマたん出産事件」があったり、ヒロと共依存症だった母親が亡くなったり、母島からのラーメン転送システムを本格的なジップラインとするために役場に陳情したりと、離島での生活に馴染んでいきます。そして主人公が、両親や伯父の本心に気付く日が訪れるのでした。「未来は、未だ誰もプレイしたことのないゲームみたいなもの」というエンディングは綺麗すぎますけどね。

 

2021/3