りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ウィンターズ・テイル 下(マーク・ヘルプリン)

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天翔ける白馬とともに空から落下したピーター・レイクは、一命は取りとめたものの記憶を失ってしまいました。しかも彼が戻ってくるまでに75年の時が過ぎ去っていたのです。魔法のように機械を操るエンジニアの腕前は健在であり、ピーターはアイザック・ペンが遺した新聞社の機械部門で働き始めます。しかし亡くなったべヴァリー・ペンの姪にあたるジェシカですら、ピーターを見分けることはできません。

 

一方で20世紀末のニューヨークには、鍵になる人々が集まってきています。ジェシカの婚約者で神がかったブレイガーはニューヨーク市長に立候補。正義の都市を求め続けるハーデスティはペン一族と関係の深いコヒーリズ湖からやってきたヴァージニアと結婚し、アビーという娘を得ています。強欲で狡猾な新聞王クレイグ・ビンキーは、相変わらず狂気に満ちた行動でニューヨークに混乱をもたらし続けています。しかも悪魔的なギャング団首領のパーリーも年を取ることなく、執拗にピーターを狙い続けていたのです。

 

そんな時にハドソン川に入ってきたのは、誰も見たことのないような巨大な船。そこから登場した橋梁建築の司祭ジャクソン・ミードは、新世紀へと向かうニューヨークに巨大な虹の橋を架けようとしているようです。そして新年を迎える直前、最後の対決へと歩を進めるピーターとパーリーの前についに白馬アサンシーが再登場。

 

3度目の千年紀を迎えたニューヨークは、完全な正義の都市へと生まれ変わったのでしょうか。本書の登場人物たちは、そこでどのような役割を担っていくのでしょうか。ピーターは愛するべヴァリーと再会することができたのでしょうか。凡人の読み手としてはわかりやすい大団円を求めてしまいたくなるのです。このようなパワフルで混沌とした物語はそれだけで「非常に長大な一篇の詩」であり、こじんまりと纏まった結末など必要としないのですが・・。

 

2021/1