りぼんの読書ノート

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地磁気逆転と「チバニアン」(菅沼悠介)

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2020年1月に開かれた国際地質科学連合理事会で、地質年代に初めて日本の地名が刻まれました。更新世の前期と中期の境界を規定する代表地として千葉県市原市にある養老川沿いの地層が選ばれて、「チバニアン」と名付けられたのです。その際に話題となったのは、この地層には直近の地磁気逆転の痕跡が刻まれているということでした。本書はチバニアン申請の中心メンバーで論文執筆責任者を務めた著者が、地磁気逆転の原理や意義をわかりやすく解説しながら、千葉の地層に記された痕跡が示すものを説明したものです。

 

地磁気逆転という言葉を初めて聞いたのは、2004年にNHKスペシャルで放送された「地球大進化」でした。巨大隕石の衝突による地殻津波や海洋蒸発、赤道にまで氷河が到達した全球凍結、マントルが変動するスーパープルームや大陸衝突や大陸大分裂という、地球の生命体を脅かしてきた恐るべき大試練の中に地磁気逆転現象も含まれていたと記憶しています。

 

そもそも地磁気はなぜ逆転するのでしょう。いや、そもそもなぜ地球に磁力があるのでしょう。簡単に言うと「地球はひとつの大きな磁石」だからだそうです。地球の芯である内核は固体ですが、その外側にある外核マントルは冷却しきっていない液体であり、その流体運動が電磁流を発生させ続けているんですね。「フレミングの右手の法則」を思い出しました。そしてその対流の不安定性が地磁気強度の変動や地磁気逆転現象を生み出しているというのです。宇宙線から地球を守っている地磁気の消失や逆転など、考えるのも恐ろしいものですが、過去に何度も起きていて、その最新の逆転が77万年前に起こった「松山-ブルン境界」だとのこと。

 

そして溶岩などに記録された「残留磁化」の痕跡がはっきりと観察できる場所が、千葉なんですね。76万年前なんて地質学的には「とても新しい」できごとなので、海底に堆積した地層が隆起して地上ではっきり見ることができる場所というのは、とても珍しいそうです。房総半島が地殻変動の激しい地域であることは、ちょっと前の「ブラタモリ」でも紹介されていました。

 

実は「チバニアン」を観察できる「千葉セクション」には、今年の3月に行ってきたばかりです。まだ緊急事態宣言前でしたが自粛は始まっていたので、ビジターセンターは閉っていましたが、養老川まで下って断層を間近に見てきました。解説が聞けずによくわからなかったのですが、この本を読んでその重要性を理解できた気がします。

 

2020/11