りぼんの読書ノート

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今昔百鬼拾遺 河童(京極夏彦)

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百鬼夜行シリーズ」のライトバージョンで、本編の主人公である京極堂こと中禅寺秋彦の妹の敦子が、女子高生の呉美由紀をバディ役として活躍する「井今昔百鬼拾遺シリーズ」の第2弾です。

 

浅草界隈で横行する男性を狙った覗き魔事件は、河童が狙う尻子玉と関係があるのでしょうか。皇室が供出して戦後のどさくさで失われた宝石の模造品は、合羽橋の道具街で作られました。千葉の夷隅川推計で次々と浮かび上がった奇妙な水死体は、河童の仕業なのでしょうか。河童との関連以外には何の脈絡もない事柄は、どこでどのように結びついていたのでしょう。

 

3体目の水死体発見の報せを受けた中禅寺敦子は、調査中の模像宝石事件との関連を探るために現地に向かいますが、死体発見者は休暇で親戚の家に来ていた呉美由紀だったのです。彼女たちがそこで見出したものは、河童伝説が生まれた水源の地で、村人たちから蔑まれていた貧しい一家の存在でした。

 

猿回しというのは、厩を浄めたり雨乞いをする民間宗教だったのですね。先祖は天皇家に仕えていたとの伝説もありますが、実際にそうだったのか、かつて差別を受けていた職種に共通するフィクションの一種なのかはわかりません。ともあれ伝説の中では、河童と猿と馬は関係が深いようです。

 

もちろん河童など登場しないのですが、中禅寺敦子が事件の真相を推理して、呉美由紀が純真な女学生らしくキレて当事者たちを納得させ、事件を解決に導くという構成は、「鬼」と一緒です。夷隅川が大蛇行を繰り返し、沈下橋もあるというのは、四万十川と一緒ですね。同じ千葉県に住んでいながら詳しく知りませんでした。近くには大多喜城養老渓谷という観光スポットもあるので、ぜひ訪れてみようと思います。

 

2020/10