りぼんの読書ノート

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陋巷に在り 4 徒の巻(酒見賢一)

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妖艶な媚術の使い手・子蓉は、唯一術をやぶられた顔回を篭絡すべく陋巷の顔家を訪れます。顔回の父親・顔路のとぼけ技には少々手を焼いたものの、ついに顔回を慕う美少女・妤に出会った子蓉は、彼女に鏡を渡します。しかし鏡とは、神聖なレベルにあるとすらいえる高度な呪具だったのです。やがて妤は、鏡の魔力に囚われていくのでした。 

 

いよいよ孔子の政治的目的である三都城の毀壊が始まりました。少正卯に取り込まれている叔孫氏の郈城は不自然な形で壊されますが、多忙な孔子はその異常さには気づいていないようです。そして続く李孫氏の費城では、悪悦が何かを企んでいるようです。 

 

そんな中で少正卯は、顔一族の聖地である尼丘山に太長老を訪れます。一族に伝わる秘礼に関心がある少正卯は、あわよくば協力関係を築き上げたいとの目的を持っていたのですが、太長老は彼を顔穆の殺害犯と思い込んでいたのです。少正卯は子蓉の暴走に気づいてもいないのですから、この出会いは不幸な結果に終わらざるを得ません。 

 

ところで少正卯の正体は「徒」であったようです。古くは太公望に発するという「徒」とは、世間を渡り歩く一族の総称」ですね。顔一族のように聖地にとどまって秘儀を守り続けるものとは、その在り方が異なるわけですが、ルーツは似たようなものなのでしょう。 

 

2020/8再読