りぼんの読書ノート

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陋巷に在り 2 呪の巻(酒見賢一)

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南方の呪礼を用いて魯国を手に入れようとした陽虎の企みは、聖地を守護してきた顔一族の抵抗によって潰えようとしています。しかし彼は秘密兵器を用意していたのです。それは太古の鬼神であった饕餮(とうてつ)の召喚。「饕餮文」として古代の青銅器に彫られている怪物ですね。その凄まじさに孔子の弟子たちも顔一族の使い手たちも恐れをなしますが、そこに顔回が立ちふさがります。彼は武ではなく礼をもって饕餮に対峙するのでした。 

 

物語は「夾谷の会」の直後に戻ります。陽虎が放逐された後の魯は、三桓家と呼ばれる季孫氏、孟孫氏、叔孫氏の三家が、君主の定公を差し置いて政治を壟断する状態に戻っていました。周代の古礼を理想とする孔子は、三桓家を没落させるための政治工作を行っているのですが、そこに新たなライバルが登場します。 

 

少正卯という謎の人物が、孔子に対抗して曲阜で塾を開き、魯の政界に登場したのです。さらに彼の一味には、悪悦という超絶的な使鬼の使い手や、悪悦の妹で媚術を用いる子蓉もいて、なかなかの勢力。とりわけ子蓉は、登場人物中で最強ではないかと思えるほどの存在なのですが、この悪兄妹に顔回は目を付けれえr手しまいます。悪悦からはライバルとして。子蓉からはもっと悪いことに恋の相手として。 

 

本書には、勝手に顔回の許嫁と称している「妤」という、貧しく無垢で、本人も意識していない能力を持っている少女が登場しているのですが、子蓉に目をつけられてしまいそうです。 

 

2020/8再読