「ただ正直に出たとこ勝負で喋るだけなので、たいていの対談でぐるぐるしてしまう」から『ぐるぐる問答』。対談の名手ではないことを自認する著者ですが、対談とはやはり「出会い」であり、「人間は陣弦との出会いを通して人生を刻んでいく」ものと、最後に記しています。読者にとっても、これらの対談を通して著者の人間性や感覚に触れることができるのであり、モリミーファンとしては読まないわけにはいきません。
全部は記録しておけないので、目次だけでも記しておきましょう。
・劇団ひとり :“笑い”の中にある“救い”
・万城目学 :対決!三つの公開質問状
・瀧波ユカリ :漫画と小説の正しい濃度
・柴崎友香 :イマドキ古都の楽しみ方
・うすた京介 :脱「○○作家」の挑戦
・綾辻行人 :京都に潜む怪しの闇
・神山健治 :物語の構造はドリフに学ぶ? オモチロ成分の考察
・上田誠 :言葉が作る現実と非現実 鴨川神話が崩れた日
・羽海野チカ :ダメダメ人間ほど愛おしい
・大江麻理子 :森見ワールドのモヤモヤ歩き
・萩尾望都 :わがままに、好きなように書く
・飴村行 :一見対極、前世は兄弟?
・本上まなみ :四畳半に帰るべし!
・綿矢りさ :暴走させない恐怖と笑い
・伊坂幸太郎 :追いつ追われつやっかみ対談
・辻村美月 :十五年目の原点回帰
多くの人との対談から、奈良出身で京大で学んだ著者の京都に対する思いや、「四畳半」というチンマイ世界に対するこだわりや、美女に面したときのへっぽこ感や、膨らんだ自我と劣等感とのせめぎあいなどが浮かび上がってきます。でもそれは、既存のイメージを強化したにすぎないポイント。
意外だったのは、大学生時代にはもっと繊細な作品を書いていたということ。そのノートはもちろん門外不出ですが、燃やしてはいないとのこと。「突き抜けていない」初期の作品を、読者が目にすることはあるのでしょうか。読んでみたい気持ちと、読んではいけない気持ちがせめぎあってしまいます。
2020/4