りぼんの読書ノート

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タダイマトビラ(村田沙耶香)

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自分の子どもを愛せない母親のもとで育った少女は、家族欲を満たすために「カゾクヨナニー」という秘密の行為に没頭します。脳内に理想の家族を作り上げ、贖罪や慈悲や絶望や慰めを求めていたのです。 

 

高校に入り、不完全な家族にすぎない我が家から逃れて年上の学生と同棲を始め、現実世界に理想の家族を築こうとするのですが、それもまたうまくはいきません。そして彼女は、「家族というものは人類が種を保存するために脳内で作り上げた精神的建築物にすぎない」と気づくのです。そして「家族というシステムそのものが失敗作だった」と。彼女がめざす「解放」とは、どのようなことなのでしょう。 

 

本書を読むと芥川賞受賞作である『コンビニ人間』など、著者の創造世界の中ではマイルドな方だと思わされてしまいます。相当にぶっ飛んだ結末ですが、その破壊力は凄まじい。現実世界に対する批評者として、笙野頼子さんと双璧なのではないでしょうか。著者にはネコなど飼って欲しくはありませんが。 

 

2020/2