りぼんの読書ノート

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魔法使ひ(堀川アサコ)

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戦後間もない青森市。焼野原からの復興に向かって人々が逞しく生き始めた町には「魔法使ひ」と呼ばれる不思議な人物がいたのです。闇市バラックに住んで闇物資を運ぶ担ぎ屋ながら、金次第で死体や幽霊までも調達できるという「魔法使ひ」とは、どのような人物なのでしょう。 

 

しかし「魔法使ひ」については、最終章で特攻隊の生き残り(もしくは死者?)らしいと述べられるだけで、最後まで正体はわかりません。本書で描かれるのは、猟奇的な殺人や陰惨な事件に巻き込まれて、彼に救いを求めに来る人々の物語です。 

 

第1話「恋がたき」では青森の闇市を牛耳る香具師を父に持つ美しい双子の姉妹、テフ子とハナ子が、第2話「仕返し」と第5話「もいちど私は」と第7話「花嫁人形」では双子姉妹に惚れられた美男の健吾が、第3話「初恋」では女中の舞子が、第4話「湖中のまぼろし」と第6話「青森のリア王」では売春婦のおようとルミーが主人公。皆それぞれ繋がりはあるのですが。 

 

著者自身が「エロくて怖くて全然癒されない」ダークファンタジーという本書ですが、郷土の青森に対する愛情もほのかに感じ取れる作品です。私としては、互いに対抗心を燃やしている、奔放ながらもろい所があるテフ子と従順ながら芯の強いハナ子の美人姉妹に、もっと活躍して欲しかったのですが。 

 

2019/11