りぼんの読書ノート

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悪魔の孤独と水銀糖の少女 2(紅玉いづき)

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孤独の悪魔を背負う男ヨクサルと死霊術師の孫娘シュガーリア。呪われた島から旅立ち、逃亡の日々を送ることになった2人の目的は、徹底した異端狩りを行っている正義の帝国に抵抗し続けること。道中で有翼種の血を引く少年ビーノを助け出して砂漠の街バフハに潜入した2人に、帝国の追手が迫ります。
 

 

その追手とは、悪徳の街でヨクサルと少年時代をともに生きたオーファス。彼が振るう正義の槍に貫かれたヨクサルを、シュガーリアは救うことができるのでしょうか。その一方で、純粋にシュガーリアを慕うビーノの正体が明らかになっていきます。 

 

死霊術師の孫娘たる本領を発揮したシュガーリアが、迷い蘇る死者の魂に引導を渡す場面はしびれましたね。彼女は愛し愛されるだての存在ではないのです。ビーノが捧げる楽園も、謎めいた女性デリラの誘いも断って、死から蘇ったシュガーリアが選んだのは、やはりヨクサルとともに、地獄の底を這いまわることだったのですね。 

 

「END」マークで終了した本書の続編が書かれることはないのでしょうが、著者特有の、静謐な情念を秘めた世界観を有する物語世界とは、別の作品でもまた出会えることでしょう。 

 

2019/8