りぼんの読書ノート

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世界の歴史10「新たなる世界秩序を求めて」(J.M.ロバーツ)

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昨年12月から、月1冊のペースで読み続けてきた10巻シリーズが完結! 「現代への影響の大きさ」を重視して歴史を記述したこのシリーズ、読んだ価値がありました。たとえば、「ビザンチン帝国が現代に伝えた最大の影響はスラブ民族に正教を伝えたことにある」と言い切る歯切れの良さや、「大航海時代以降、誕生以来『分散』を進めてきた人類の歴史は『統合』へと向かうことになった」と、長期的な潮流で歴史を俯瞰する視点は素晴らしい。

最終巻の解説をしている立花隆さんは、10巻から読み始め、9巻、8巻へと遡って読んでいったそうです。現代に起きている問題を理解するために、その源流をたどっていくかのような読み方もあるんですね。

あらためて世界史を通読してみると、現代が凄まじい転換期にあることが理解できます。あたしが物心ついてからだけでも、ソ連崩壊と冷戦の終結、東欧民主化とドイツ統合、コソボ内戦、東南アジアの成長とアジア通貨危機、中国・インドの成長と付随する混乱、9.11テロとアフガン・イラク戦争、携帯電話とネットの普及など、世界史的に大きな事件・事象が頻発しているのですから。

一方では「民族と宗教による線引き」、もう一方では「経済至上主義の横行」といった現代の疾病から、将来の人類は自由になることができるのでしょうか。

もう一度、第9巻で紹介した一文を記して、レビューを終えようと思います。「私たちが同時代の歴史を見るにあたってできることは、目の前で起きている圧倒的されるほど大きな出来事を、歴史の流れの中で、さまざまな視点から理解しようとつとめることだけだといえるでしょう。」

2007/9