りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2022-06-01から1ヶ月間の記事一覧

2022/6 Best 3

1.レニーとマーゴで100歳(マリアンヌ・クローニン) 病院で終末医療を受けている17歳の少女レニーが、アートセラピーで83歳のマーゴと知り合います。ともに死と向き合っている年齢の離れた2人の女性は、自分たちが生きた証として、合わせて100…

手のひらの音符(藤岡陽子)

主人公は45歳独身で、服飾デザイナーの瀬尾水樹。彼女は自社が服飾業から撤退することを知らされて愕然とします。そんなタイミングで中高時代の同級生・憲吾から掛かってきたのが、恩師の入院を知らせる電話でした。お見舞いへと帰省するなかで、彼女の心…

編集ども集まれ!(藤野千夜)

1985年から1993年にかけて出版社の漫画編集者として働いていた著者が、当時の出来事を自伝的に綴った作品です。雑誌連載時には「自伝的編集者ストーリー」との説明が付けられていたとのこと。 大学を卒業して神田神保町にある「青雲社」に就職した主…

加賀金沢(室生犀星)

金沢の室生犀星記念館に行くことにしたので、その前に、著者の自伝的エッセイ集である本書を読んでみました。若い日に創った「ふるさとは遠きにありて思ふもの」の詩や、晩年の『杏っ子』などの小説も有名ですが、随筆家という一面も持っていた方であると初…

灰の劇場(恩田陸)

1994年に新聞で読んだ、2人の女性の飛び降り自殺の記事に、まだ会社員を兼業していた著者は衝撃を受けたそうです。それから四半世紀が過ぎ、この記事をもとにして小説を書いてみようと決意した著者は、自分の興味がどこにあったのか、あらためて悩んだ…

パンドラの少女(M・R・ケアリー)

10歳の少女の名はメラニー。大好きなジャスティーノ先生の授業を受けることを楽しみにしていて、成績は常にトップ。しかし彼女が住んでいるのは独房で、教室への移動も授業中も、車いすに拘束されたまま。優秀な彼女はここがロンドンの北にある陸軍基地で…

たった一人の反乱(丸谷才一)

歴史的仮名遣いで有名な著者ですが、1966年から1974年までの一時期は現代的仮名遣いを用いていたとのこと。本書はその期間である1972年に書かれています。どうりで読みやすいと思った。 東大出身の元通産官僚で、現在は民間会社の部長職に就いて…

横しぐれ(丸谷才一)

中世の和歌・連歌を専攻とする東京の大学教授が主人公。水戸で産婦人科医師であった父が亡くなる前に聞かせてくれた若き日の四国旅行の話をきっかけとして、奇妙な追跡劇が始まります。父の旧友で四国旅行に同行した旧制高校国語学教授の黒川先生は、松山の…

中年(丸谷才一)

著者が1968年に綴った短編で、「丸谷才一全集」の第3巻に収録されています。既に2作の長編を著して芥川賞をはじめとする文学賞を得ている著者が43歳の時の作品ですが、彼が本領を発揮するのはこの後ですね。『たった一人の反乱』、『裏声で歌へ君が…

少女霊異記(高樹のぶ子)

奈良薬師寺の僧・景戒による『日本霊異記』の成立は9世紀はじめのこと。「説話集」なので、勧善懲悪を説いて仏法僧を敬うためのエピソード集であるべきなのですが、これはいい意味で玉石混交でハチャメチャなのです。別の言い方をすれば、物語として面白い…

興亡の世界史1.アレクサンドロスの征服と神話(青柳正規編/森谷公俊著)

「時代ごと国ごとではなく広い視野でとらえ直す」との趣旨で編纂された世界史シリーズの第1巻は、アレクサンドロスでした。第0巻の「人類文明の黎明と暮れ方」で古代文明についての概括は済んでいるわけですが、通常その直後に来るはずの古代ギリシャが飛…

短くて恐ろしいフィルの時代(ジョージ・ソーンダーズ)

寓話的で短い作品ですが、テーマは「ジェノサイド」であり、ぞっとさせられてしまいます。国民が1度にひとりしか住めないほど小さな「内ホーナー国」と、その周りを囲んでいる巨大な「外ホーナー国」の住民は、機械の部品は動植物のパーツを組み合わせたよ…

ジュスタ(パウル・ゴマ)

ルーマニアの反体制派文学者として名高い著書が、1985年に亡命先のパリで著した作品です。本書の訳者が先に解説に目を通しておくことを勧めているように、ルーマニアの近現代史および戦後の反体制運動を理解しておくことが必要です。本書は著者が195…

レニーとマーゴで100歳(マリアンヌ・クローニン)

グラスゴーの病院で終末医療を受けている17歳の少女レニーが、アートセラピーで83歳のマーゴと知り合います。年齢こそ大きく違いますが、ともに死と向き合っている2人の女性は、自分たちが生きた証として、合わせて100年の人生を100枚の絵にして…

私のおばあちゃんへ(ユン・ソンヒ他)

書肆侃侃房の「韓国女性文学シリーズ」第10巻は、「おばあちゃん」をテーマとする短篇を集めたアンソロジーです。それぞれ30代から40代の6人の女性作家たちが描くのは、自分の母の世代の女性であると同時に、自分自身の未来の投影でもあるようです。 …

鯖猫長屋ふしぎ草紙 9(田牧大和)

かつての義賊「黒ひょっとこ」で今は画描きの青井亭拾楽が、不思議な力を持つオス三毛猫サバと長屋で暮らす、ちょっと不思議なお江戸ミステリの第9弾。この数巻は1冊だけで完結する物語が続いていたのですが、本書で登場する不気味ながら魅力的な人物は、…

興亡の世界史0.人類文明の黎明と暮れ方(青柳正規)

久しぶりに世界史を体系的に読み返してみようと思い、図書館の目立つところに全巻揃っていたこのシリーズを手に取ってみました。前回に読んだのは2007年で、創元社から出版されたJ・M・ロバーツ編『世界の歴史全10巻』だったから、15年ぶりのこと。…

オリジン 下(ダン・ブラウン)

歴史を変えるという発表の直前に暗殺された天才科学者カーシュは、事前に予告していたように、人類の起源と未来に待ち構えている運命を完全に証明できていたのでしょうか。カーシュがサグラダ・ファミリアに寄贈していたウィリアム・ブレイクの手稿本から手…

オリジン 中(ダン・ブラウン)

宗教象徴学者ラングドンを主人公とするシリーズ第5弾は、生命誕生の秘密に迫るものでした。しかし「われわれはどこから来てどこへ行くのか」との問いに対する解答を得たというコンピューター科学者カーシュは、世界に向けて発表を行う直前に殺害されてしま…

オリジン 上(ダン・ブラウン)

宗教象徴学者ラングドンを主人公とするシリーズの第5弾です。『天使と悪魔』、『ダ・ヴィンチ・コード』、『ロスト・シンボル』、『インフェルノ』の前4作も、トム・ハンクスが演じる映画化3作品も大ヒットしました。ローマ、パリ/ロンドン、ワシントン…

メイズ・ランナー(ジェイムズ・ダシュナー)

SFミステリーとして映画化された原作本。「記憶を失って謎めいた世界に送り込まれた少年」というと、何やらロールプレイングゲームの始まりのようですが、まさにその通り。主人公のトーマスが危険な世界を生き延びていく中で自分自身を取り戻していく物語…