りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2016-02-01から1ヶ月間の記事一覧

2016/2 マルコーニ大通りにおけるイスラム式離婚狂想曲(アマーラ・ラクース)

1位に上げたのは、アルジェリアに生まれてローマに在住している著者による、「異文化の衝突」をテーマにしたコメディです。現実世界での移民問題は、もはや「笑える状況」ではないのですが・・。 山本弘さんの「ビブリオバトル」を扱った小説は、2冊とも新…

オリンポスの神々と7人の英雄 5.最後の航海(リック・リオーダン)

オリンポスの神々と人類に復讐を誓うタイタン族のガイアの復活が近づいており、神々の宿敵として造られたギガンテスや怪物たちの活動も活発になっています。アルゴ2号でアテネへと向かう7人のハーフたちは、間に合うのでしょうか。 7人は、イタキ島で情報…

マルコーニ大通りにおけるイスラム式離婚狂想曲(アマーラ・ラクース)

アルジェリアに生まれてローマに在住している著者は、異文化の交錯と共存と衝突を、身を持って体験しているのでしょう。前作『ヴィットーリオ広場のエレベーターをめぐる文明の衝突』に続いての邦訳作品も、同様のテーマを扱っています。 とはいえ、イーサー…

再会(諸田玲子)

『あくじゃれ瓢六シリーズ』の第4作として、前作『べっぴん』から4年後に出版された本書では、これまでの雰囲気が一変していました。 恋女房・お袖と仲睦まじく同居しながら、自分の生きる道を見いだしたはずだった瓢六が、なぜ不良旗本屋敷の借家人として…

神さまたちの遊ぶ庭(宮下奈都)

福井に在住している著者が、北海道は大雪山国立公園内の小さな集落「トムラウシ」で1年間暮らした物語。発端は「自然に根差した暮らしがしたい」という夫の提案。小中学校には山村留学という制度があるものの、ここには高校がないので、長男が中3のときの…

自堕落な凶器(アリエル・S・ウィンター)

三部構成のミステリです。おもしろいのは3作がいずれも、それぞれ特徴あるミステリ界の大御所に捧げたパスティーシュになっている点。 第1部「マルニヴォー監獄」は、1931年にフランスの田舎町で起こった囚人連続失踪事件。閉ざされた監獄内で何が起こ…

「裏国境」突破東南アジア一周大作戦(下川裕治)

タイから、カンボジア、ベトナムを経て、ラオス、ミャンマーへ。空路で主要都市に入る分には、あるいはメジャーな観光地に近い国境から入る分にも、なんの問題もありません。しかし、普段は外国人が通ることもない、地名も知られていないマイナーな国境も、…

円卓(西加奈子)

渦原琴子、通称こっこ。公団団地で、祖父母、両親、三つ子の姉と8人暮らし。家族全員から愛されている一方で、にぎやかな家族に辟易しており、とりわけ「あの美人三つ子の妹」と呼ばれることが大嫌い。好きな言葉は「孤独」であり、「可愛そうな状況」に置…

復讐者たち(マイケル・バー=ゾウハー)

少年時代に建国時のイスラエルに移住し、大学教授にしてスパイ小説の巨匠となった著者による、「ナチス狩り」ノンフィクション小説です。 第1部は、戦争直後の欧州で、身分を隠して逃亡・隠棲を図ったナチスたちへの直接復讐の物語。イスラエルで編成された…

妖怪探偵・百目3(上田早夕里)

高度なテクノロジーと呪術が共存している未来社会。人間と妖怪もまた、打算と駆け引きによって共存するようになっています。そんな社会を象徴している境界の街・真朱が、危機に瀕しています。「穢れ」を餌にして巨大化し、人間も妖怪も全てを飲み込んでいく…

陽だまりの彼女(越谷オサム

中学時代の初恋の相手だった真緒と、仕事先で10年ぶりに再会した浩介は、驚きました。かつては落ちこぼれでイジメを受けていた真緒は、「デキる女系」の美女に大変身を遂げていたのです。そんな彼女に再び恋をした浩介でしたが、彼女にはとんでもない秘密…

幽霊なんて怖くない(山本弘)

お勧めの本を紹介しあう書評会を競技化した「ビブリオバトル」を題材にした「BISビブリオバトル部シリーズ」の、『翼を持つ少女』'''に続く第2作です。 自分の大好きなSF作品について熱く語ることの楽しさに気づいた、不思議少女の伏木空は、部員とし…

翼を持つ少女(山本弘)

お勧めの本を紹介しあう書評会を競技化したのが「ビブリオバトル」。2007年に京都の研究室ではじまった運動が、全国規模にまで広がっているとのこと。本書は、若い世代のSF離れを憂う著者が、SF界の活性化のために書いた、「SF大好き少女を主人公…

曽呂利!(谷津矢車)

豊臣秀吉に御伽衆として仕えたといわれる曽呂利新左衛門を中心に据えて、豊臣政権末期の人間模様を描いた作品です。講談本では、権威を笑い飛ばす頓智の才能をもって、気難しくなった晩年の秀吉の唯一の話し相手となったと言われる人物に、新しい解釈を持ち…

アルモニカ・ディアボリカ(皆川博子)

近代警察組織が生まれる前の18世紀ロンドンで、盲目の治安判事として尽力したジョン・フィールディングを、やはり実在の解剖学者ジョン・ハンターをモデルにした外科医ダニエルと組み合わせた歴史ミステリ、『開かせていただき光栄です』の続編です。 5年…

解剖医ジョン・ハンターの数奇な生涯(ウェンディ・ムーア)

皆川博子さんの『開かせていただき光栄です』を読み、主役の解剖学者・ダニエルのモデルとなった「ジョン・ハンター」のことを知りました。18世紀半ばのロンドンで生命の神秘を解明すべく、半ば非合法の死体解剖と標本蒐集に務め、後に「近代外科医学の父…

チャイコフスキー・コンクール(中村紘子)

長らく日本人女性ピアニストの代名詞的存在であった著者が、1986年に世界屈指の音楽コンクールで審査員を務めた際に観察したことを中心に据えて書かれた作品です。著者の観察眼の確かさと、文章の上手さに感心しました。大宅壮一ノンフィクション賞を受…

雀蜂(貴志祐介)

11月下旬の八ヶ岳の山荘。小説家の安斎が目覚めると、一緒にいたはずの妻は姿を消していました。通信機器もクルマも使えなくされ、山荘内にはトラップが仕掛けられた中で、安斎はスズメバチの大群に襲われます。 昔ハチに刺されたため、もう一度刺されると…

パンドラの匣(太宰治)

戦後に新聞小説として執筆されましたが、もとになっているのは、太宰の読者であった木村庄助氏が戦中に綴った病床日記です。 主人公は、20歳の青年ヒバリ。「健康道場」という風変りな結核療養所で闘病生活を送りながらも、周囲の人々と交流していく様子が…

正義と微笑(太宰治)

戦時中に書かれた青春小説ですが、明るく爽やかです。弟子の堤重久から見せられた、弟の堤康久の日記を下敷きとした作品なのですが、日記が書かれたのは昭和10年頃だとのこと。時代はまだ、太平洋戦争には突入していなかったのです。 日記の書き手である主…

海鳴り(藤沢周平)

藤沢周平さんの作品は武家物のほうが有名ですが、本書は市井物。しかもテーマはダブル不倫です。とはいえ、不義密通が死罪にあたる江戸時代のことですから、決して浮ついた話ではありません。武家物と共通する「凛とした」雰囲気さえ漂う作品です。 主人公は…

星影の娘と真紅の帝国(レイニ・テイラー)

シリーズ第1巻『煙と骨の魔法少女』の続編です。自分の「前世」を知ったプラハの女学生カルーは、そのあまりの罪深さに慄きました。カルーの前身であったマドリガルが、宿敵・天使族のアキヴァと愛し合ったことが、キメラ族の敗北と虐殺の端緒となっていた…

怪盗ジバコ(北杜夫)

『ドクトル・ジバゴ』とは何の関係もありません。1967年の作品ですから、ほぼ半世紀前。今では許されない差別的表現などもありますが、ルパンをベースにして、さまざまなミステリを混ぜ合わせたようなユーモア感覚は、現代でも色褪せていません。ちなみ…