りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2016-01-01から1ヶ月間の記事一覧

2016/1 オルフェオ(リチャード・パワーズ)

新年早々ですが、リチャード・パワーズの新作も、ポール・オースターの新作も、宮部みゆきさんのファンタジーも、少々期待外れ。『オルフェオ』を1位としたのは、消去法です。★はつけませんでしたが、一番おもしろかったのは、『テスタメントシュピーゲル …

撲撲少年(仁木英之)

唐時代の中国を舞台にした仙人ファンタジー『僕僕先生』の著者による「現代仙人もの?」と思ったら、字が違っていました。あちらは「にんべんの僕」で、こちらは「てへんの撲」だったのです。なんと、総合格闘技小説だったのです。 大学を留年してしまった勇…

道(白洲正子)

「私の書くものはいつも旅が中心となっており、道を歩いて行く間に出来上って行く」。伊勢・大和の旧道、橋と石仏、そして比叡山の峰々を巡って、日本の美と文芸、自然と宗教に思いを馳せた作品です。名作『かくれ里』とも通じる所も多い、歴史紀行となって…

べっぴん(諸田玲子)

長崎通詞所で目利きをしていた反骨心旺盛な色男の瓢六を主人公とする『あくじゃれ』シリーズの第3作です。入牢した際に与力の菅野に人間力を見込まれて、奉行所を助けて難事件を解決する役割を担ってしまった瓢六ですが、無罪放免となった後も、同心の篠崎…

ライフボート(シャーロット・ローガン)

沈没した豪華客船から脱出し生き残った女性グレースが、殺人罪で裁判にかけられる冒頭シーンから、物語は回想に入っていきます。従って、救命ボートで何が起きたのか、その真実を解明していくのが小説のテーマなのですが、そう簡単なものではありません。本…

リタとマッサン(植松三十里)

昨年の朝ドラの放映を見こして書かれた小説なのでしょう。「日本ウイスキーの父」と称されるようになる竹鶴政孝と妻リタの夫婦愛を描いた物語。朝ドラと異なり、こちらは全て実名なのですが、かなりの部分は著者の脚色のようです。 2人の出会いは1919年…

煙と骨の魔法少女(レイニ・テイラー)

プラハで芸術を学び、美しく奇怪な生き物であるキメラの絵を描く、青い髪の少女カルー。しかし、誰もが想像の産物だと思うキメラたちは、実在していたのです。彼女が学校の帰りに立ち寄るのは魔法の通路の向こうにある「願い事屋」であり、人と獣が混じった…

カッコウの呼び声(ロバート・ガルブレイス)

馴染みのない著者名ですが、あの「J.K.ローリング」のペンネームだそうです。著者は匿名希望のようだったようですが、それが明かされてしまったのは「出版界の事情」なのでしょう。本書は、人間関係や伏線の説明にじっくりと時間をかけるという、あまり現…

7は秘密(リンジー・フェイ)

ロンドンのスコットランドヤードに遅れること16年、ニューヨーク市警の創設は1845年でした。『ゴッサムの神々』に続く「ニューヨーク最初の警官」シリーズ第2作は、人種問題へと踏み込んでいきます。 1846年の真冬、ニューヨーク市警で刑事的な役…

東京ピーターパン(小路幸也)

年齢も職業も人生もバラバラな者たちが、ある事件によって出会い、起こした奇跡とは何だったのでしょうか。 元ギタリストで現ホームレスのシンゴ(60歳)。若いころにドラム経験があり、シンゴのファンだったことがある警察官の吉川(52歳)。ミュージシ…

セント・イージス号の武勲(上田早夕里)

海洋SF小説『華竜の宮』の著者による、海洋冒険小説です。トラファルガー海戦という史実をベースとし、ありえたかもしれない実験的な汽帆船と、ファンタジー的な海洋生物を操る孤島の民を登場させ、少年の成長を描くという、欲張った内容。 主人公は、イギ…

子供時代(リュドミラ・ウリツカヤ)

1949年のモスクワらしき町で、中庭のあるアパートに住む子供たちを主人公とした連絡短編集。子供たちは誰でも、「奇跡の瞬間」を経験するものなのです。 「キャベツの奇跡」 弟を連れてお使いにでた少女ドーシャのポケットには穴が開いていました。お金…

酒仙(南条竹則)

1993年に「第5回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞」を受賞した作品です。 酒で財産を使い果たした旧家の御曹司・暮葉左近が主人公。最後の楽しみとして、熱酒風呂につかったまま死のうとしたところ、「蓬莱酔八仙人」のひとりである鉄拐李の目にとまっ…

開かせていただき光栄です(皆川博子)

舞台は18世紀半ばのロンドン。ホームズよりも1世紀以上、ディケンズよりも半世紀前の時代、産業革命以前ながら拡張を始めていたロンドンは、矛盾に満ちた世界だったようです。上流貴族と最下層の貧民が同居し、新しい医学と旧い迷信が衝突し、高い犯罪率…

こんちき(諸田玲子)

『あくじゃれ瓢六』シリーズの第2作です。主人公は、長崎通詞所で目利きをしていた反骨心旺盛な色男の瓢六。入牢した際に、与力の菅野に人間力を見込まれて、奉行所を助けて難事件を解決する役割を担ってしまいました。無罪放免となった後も、同心の篠崎弥…

オルフェオ(リチャード・パワーズ)

リチャード・パワーズの新作は、音楽と遺伝子というかけ離れたテーマを組み合わせた作品でした。もっとも、音楽に関しては『われらが歌う時』、遺伝子に関しては『幸福の遺伝子』という作品が既にありますから、得意のテーマですね。 主人公は、老年の前衛作…

親鸞 完結編(五木寛之)

「親鸞3部作」が完結しました。法然に出会って独自の信仰を追求し始めた青年期の『親鸞』と、東国で布教に励んだ壮年期の『激動編』に続く「完結編」では、60歳を過ぎて京に戻ってからの晩年が描かれます。 著者自らが「稗史物語」という作品ですから、「…

過ぎ去りし王国の城(宮部みゆき)

宮部さんのファンタジー作品です。幻想的な表紙の絵は、ドナウ川のヴァッハウ渓谷にあるメルク修道院だとのこと。来年の夏休みにオーストリアに行くことを検討中なので、立ち寄ってみたいものです。 主人公は、並みのレベルの高校に推薦入学を決めたばかりの…

儀式(パトリシア・コーンウェル)

「検屍官シリーズ」第21作は、なかなか痛快なストーリーでした。法執行サイドにいる者の許されざる行為に気づいたスカーペッタ、ベントン、ルーシー、マリーノらが、悪事を行った者を追い詰めていく終盤は、アメリカ人が好きそうな展開です。最近、ジトッ…

テスタメントシュピーゲル 2(冲方丁)

民族主義の残渣と、国連組織経由で持ち込まれた世界中のテロが交差する近未来都市ウィーン。超少子高齢化を背景とした児童労働の許可と、重度身体障害者に機械化四肢を与える福祉政策の融合によって生み落とされ、治安維持のために戦う6人の「特甲少女たち…

闇の中の男(ポール・オースター)

作者の言う「部屋にこもった老人の話」系列のひとつです。著者自身を彷彿とさせる主人公は、元書評家で72歳のオーガスト・ブリル。47歳の娘と、23歳の孫娘と3人で静かに暮らしています。彼らはそれぞれ、配偶者や恋人と別離して傷を負っています。 毎…