りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2013-09-01から1ヶ月間の記事一覧

2013/9 オール・クリア(コニー・ウイリス)

コニー・ウィリスさんの新作『ブラック・アウト』から続く『オール・クリア』がついに完結。他にもキース・ロバーツさんの古典的名作『パヴァーヌ』やケルスティン・ギアさんの作品など、タイムトラベルものを多く読んだのは偶然です。 先月、スコット・トゥ…

砂の覇王 5~8(須賀しのぶ)

ついに本人も知らなかったカリエの正体が明らかになります。彼女こそが亡国ギウタ王国最後の皇女カザリナであり、包囲されて炎上する王都ヨギナから彼女を連れて脱出した人物こそが、謎の美女ラクリゼだったというのです。しかしそれだけではありません。カ…

日輪の賦(澤田瞳子)

701年に制定された大宝律令によって、この国の形は決定されました。刑法に相当する「律」と民法・行政法に相当する「令」のみならず、日本という国号、天皇という元首、中央・地方の官制や税制が定められたのです。 本書は、白村江の敗戦によって増大した…

シスターズ・ブラザーズ(パトリック・デウィット)

ゴールドラッシュに沸く19世紀半ばのカリフォルニア。悪名轟く凄腕の殺し屋2人組が、雇い主の「提督」に命じられるまま、ある山師を消しにサン・フランシスコへと向かいます。 変なタイトルですが、粗野で狡賢い冷血漢の兄・チャーリーと、普段は心優しい…

終わりの感覚(ジュリアン・バーンズ)

穏やかな引退生活を送るアレックスのもとに見知らぬ弁護士から、学生時代の恋人ベロニカの母親からの遺贈品があるとの連絡が入ります。それは、彼の高校時代の親友でケンブリッジ在学中に自殺したエイドリアンの日記でした。ベロニカは主人公と別れた後エイ…

銀河鉄道の彼方に(高橋源一郎)

宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』をモチーフとして、「その先にあるもの」を追求した作品です。ジョバンニが旅した銀河鉄道とはいったい何だったのか、本書に示された著者の答えは、現代に文学がなおも存在しうる理由を問い続けてきた作家にふさわしいものだった…

ブランコ乗りのサン=テグジュペリ(紅玉いづき)

首都湾岸地域に誘致された大規模なカジノ特区に作られた、古き男性文学者の名を戴いた少女たちが集まるサーカス団。団長のシェークスピア、歌姫のアンデルセン、猛獣使いのカフカ、パントマイムのチャペック、そして空中ブランコのサン=テクジュぺリ。 花形…

ピアニスト(エティエンヌ・バリリエ)

2人のスイス人音楽評論家が、中国人美人ピアニストを巡って大論争を繰り広げます。年配の評論家は彼女の演奏を「奇跡」と呼び、若手の評論家は「機械的に正確なだけの猿真似」と呼ぶのです。難曲を弾きこなすテクニックの解説や、ホロビッツやグールドら実…

砂の覇王 1 ~4(須賀しのぶ)

全27巻の大作である「流血女神伝」の第1部『帝国の娘』の続編は、勃興紀のトルコをイメージしたエティカヤ王国に舞台を移します。 ルトヴィア王国の皇子の身代わりの立場を捨てて太子宮カデーレを脱出した主人公の少女カリエと、彼女に好意を持った教育係…

パヴァーヌ(キース・ロバーツ)

いわゆる「歴史改変もの」ですが、本書が叙情性に溢れているのは、「歴史改変期間の長さ」によるものなのでしょうか。ジョー・ウォルトンの{{{『ファージング三部作』}}、マイケル・シェイボンの『ユダヤ警官同盟』、クリストファー・プリーストの『双生児』…

青玉(サファイア)は光り輝く(ケルスティン・ギア)

ドイツ生れのタイムトラベル・ファンタジー3部作の第2巻です。前作のタイトルであった「ルビー」は主人公の少女グウェンドリンに割り当てられた宝石でしたが、「サファイア」は彼女の年上の従姉妹で、秘密結社「監視団」に反逆して逃亡中のルーシーを指す…

紅玉(ルビー)は終わりにして始まり(ケルスティン・ギア)

ドイツ生れのタイムトラベル・ファンタジーです。でもなぜか舞台はイギリスなんですね。3部作の第1弾。 タイムトラベラーの家系に生まれた16歳のグウェンドリン。本当は従姉妹のシャーロットがタイムトラベラーといて期待されていて幼い頃から教育を受け…

岳飛伝 3(北方謙三)

わずか8万の梁山泊軍が、名将へと変貌を遂げた兀朮(ウジュ)率いる金軍20万を退けることができたのは、紙一重の差だったようです。老いたりとはいえ、史進の存在は大きいのです。しかし、この戦いで楊令の仇として兀朮に迫った蘇琪を返り討ちにしたのは…

帝国の娘(須賀しのぶ)

『 芙蓉千里シリーズ』で新境地を開いた須賀さんの初期の傑作『流血女神伝』の幕開けを飾る作品です。図書館では「児童向け」に分類されているライト・ノヴェルですが、あなどってはいけません。豊富な世界史知識を背景として作り上げられた世界観と、「少女…

日曜哲学クラブ(アレグザンダー・マコール・スミス)

ボツワナの女性探偵マ・ラモツエを主人公とする『No.1レディーズ探偵社』シリーズの著者による、新たなミステリ。これもシリーズ化されているようです。 主人公は、スコットランドのエディンバラに住む、40代前半の女性哲学者イザベル・ダルハウジー。離婚…

一路(浅田次郎)

幕末期、中仙道を進む参勤交代行列ストーリーは、見事なロードノヴェルに仕上がっています。 屋敷の失火で焼死した父から家督を相続し、交代寄合蒔坂家の御供頭として江戸への参勤行列を差配することになった小野寺一路は、父から何も教わっていなかったため…

紳士の黙約(ドン・ウィンズロウ)

サンディェゴのサーファーたちには、時間帯によって集まるメンバーが異なっているようです。早朝、地元の若者たちが仕事前に波に乗る時間帯は『夜明けのパトロール』と呼ばれ、次いで年配者たちの「紳士の時間」が来るとのこと。 地元屈指のサーファーである…

サムライ・ノングラータ(矢作俊彦)

1892年というと明治25年、日清戦争の2年前にあたります。この時期アメリカは太平洋進出を目論み、ハワイ併合を目指していました。独立ハワイ王国の継続を求める勢力が頼りにしていたのは、かねてより友好関係を維持していた日本。 本書は、その歴史的…

有罪答弁(スコット・トゥロー)

『推定無罪』から20年以上の時を経て著された『無罪』までの「キンドル郡4部作」から一線を画した感のある本書は、娯楽性の高いグリシャム的な法廷ミステリとなっています。 大手法律事務所に勤める、元警察官で現窓際弁護士のマック・マロイは、560万…

われらが父たちの掟(スコット・トゥロー)

『立証責任』で弁護士サンディ・スターンと対決した女性検事ソニー・クロンスキーを主人公に据えて、60年代に青春を共有した者たちの世代感覚を描いた作品です。 1995年、女性判事となっていた40代後半に差しかかったソニーの法廷に、州上院議員エド…

立証責任(スコット・トゥロー)

『推定無罪』で超絶の法廷戦術を展開した刑事弁護士サンディ・スターンを主人公に据えた作品です。あの作品に登場する多くの人物が不安定な人間関係に苦しみながら生きているのに対し、この人だけは「揺るぎない」と思っていたのですが・・。 あの事件から3…

推定無罪(スコット・トゥロー)

言わずと知れた法廷ミステリの最高傑作です。キンドル郡の主席検事補を勤める主人公サビッチが、自ら捜査していた女性検事補キャサリン殺害犯の容疑者として訴追される物語。一時期はキャサリンと不倫関係にあったサビッチですが、殺害などは全く身に覚えの…

オール・クリア2(コニー・ウィリス)

『ブラックアウト』から続いてきた長い物語がついに完結します。 第2次大戦下イギリスの現地調査から戻れないまま苦闘を重ねるマイク、メロビー、ポリーに新たな問題が発生。3人を救出に向かったオックスフォード大学のダンワージー教授もまた、この世界に…

オール・クリア1(コニー・ウィリス)

『ブラックアウト』の続編は2分冊でした。引っ張りますねぇ。 2060年から、第2次大戦下イギリスの現地調査に送りだされたまま、戻れなくなってしまったオックスフォード大学の史学生3人の苦闘は続きます。アメリカ人記者としてダンケルク撤退を調査し…