りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2013-06-01から1ヶ月間の記事一覧

2013/6 マリッジ・プロット(ジェフリー・ユージェニデス)

1位は「結婚に至る経緯=マリッジ・プロット」をそのまま題名にした、ジェフリー・ユージェニデスさんの新作で文句なしに決まりです。 今月アップした作品は、5月の長い出張時に読んだ本が大半ですので、文庫本が多くなっています。キンドルにでもすれば便…

ケイン・クロニクル 3.最強の魔術師(リック・リオーダン)

カーターとセイディの兄妹は、フェニックスに築いた巨大ピラミッドで復活を果たそうとするセトとの対決に臨みます。2人を追う「生者の家」の魔術師たちも次々と集結。カーターが心を寄せる「正者の家」の書記・ジルも2人の敵なのでしょうか。また兄妹の叔…

ケイン・クロニクル 2.ファラオの血統(リック・リオーダン)

カーターとセイディの兄妹を追う魔術師集団の最長老イスカンダルは、謎めいた言葉を残して逝去してしまいます。兄妹の両親が「生命の家」の掟を破って古代神を召喚した背景には、母ルビーの予言があったというのですが、秘密を握っていたのはやはり猫神のバ…

ケイン・クロニクル 1.灼熱のピラミッド(リック・リオーダン)

『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』の著者による、エジプト神シリーズです。児童書の扱いですが、なかなか読み応えがありました。 カーターとセイディの兄妹の母ルビーは6年前に謎の死を遂げ、今度は考古学者の父ジュリアスが大英博物館でロゼッタ…

濱次お役者双六 二ます目 質草破り(田牧大和)

『花合せ』に続くシリーズ第2作です。江戸の文政期、森田座の大部屋女形の梅村濱次を主人公とする時代ミステリ。 「幽霊趣味」がある濱次には先代の名女形・有島香風の霊が宿ることもあり、筋も姿もいいのですが、幼くして両親を亡くしたこともあって「人情…

内海の漁師(ル=グィン)

『風の十二方位』に続く、「ハイニッシュ・ユニバース・シリーズ」関連の短編作品集です。とりわけ最後の3作品は、光速を超える宇宙時空移動という「本格SF」っぽいテーマを扱いながらも、ファンタジーの香を強く残した、著者らしい作品になっています。 …

七つの会議(池井戸潤)

以前の作品にもあったようなテーマですが、筆がこなれて読みやすくなっているだけでなく、悪役を演じることになる人たちの背景まで書き込まれて深みを増しているように思います。著者はこの作品について、「ベストじゃない環境の中でも生きていかなきゃいけ…

万物理論(グレッグ・イーガン)

すべての自然法則を包み込む単一の「万物理論」の完成を目前にした3人の物理学者の中で、誰の説が正しいのでしょうか。科学ジャーナリストのアンドリューは、3人の中で最年少の女性学者モサラに密着取材するのですが、万物理論の完成を妨害する反科学カル…

ヴァン・ヘルシング(ケヴィン・ライアン)

映画化された作品です。というより本書は映画のノヴェライズなのでしょうか。「ヴァン・ヘルシング」とは聞き慣れない名前ですが、古典映画「ドラキュラ伯爵」で吸血鬼の弱点を見抜いた老科学者とのこと。この作品では、バチカンの秘密組織に属する「モンス…

世界の合言葉は森(ル=グィン)

「ハイニッシュ・ユニバース・シリーズ」の中編2作品。 「世界の合言葉は森」 森林が消滅した地球に木材を輸出するため、殖民惑星ニュータヒチでは原住種族アスシー人を奴隷のように使役しながら、大規模な伐採が進められていました。利益優先の乱開発で、…

風の十二方位(ル=グィン)

「ハイニッシュ・ユニバース・シリーズ」に分類される作品を中心に執筆年代順に並べた短編集です。冒頭の初々しい「セムリの首飾り」からラストの円熟した「革命前夜」まで、著者の思想や作風の成長過程を楽しめること、間違いありません。 「セリムの首飾り…

地図になかった世界(エドワード・P・ジョーンズ)

南北戦争直前のヴァージニア州を舞台にした本書は、33名の黒人奴隷を有するタウンゼンド農園主ヘンリーの急逝から幕を開けます。驚くべきは、ヘンリーも未亡人となったカルドニアも黒人だということ。当時、自由黒人も、奴隷を所有していた黒人も少数なが…

ペルセウス座流星群 -ファインダーズ古書店より(ロバート・チャールズ・ウィルスン)

『時間封鎖シリーズ』の著者による連作短編集です。各短編は、トロントにある「発見者」の名を持つ謎めいた古書店を接点としてゆるやかに繋がっているものの、むしろひとつひとつ独立した「非日常の物語」としての性格が強いようです。ジャンルとしては、S…

マリッジ・プロット(ジェフリー・ユージェニデス)

『ミドルセックス』でピューリッツアー賞を獲得した寡作な著者の最新作は「ラブコメ」でした。でも「ラブコメ」を侮ってはいけません。ヴィクトリア朝時代の偉大な英国作家ブロンテ姉妹もオースティンもハーディも、さらにはシェイクスピアやトルストイも「…

銀盤のトレース age16 飛翔(碧野圭)

高1の秋、ついに全日本ジュニア選手権大会に出場を果たした朱里ですが、試合当日に体調を崩し、スケート靴のトラブルにも見舞われ、絶体絶命のピンチに陥ってしまいます。でも何が幸いするかわからないもの。熱で朦朧とした中でジャンプに入る軌道を間違い…

銀盤のトレース age15 転機(碧野圭)

名古屋でフィギュアスケーターをめざす少女、竹中朱里の小学生6年生の1年間を描いた『銀盤のトレース』の続編です。 中学生となった朱里は、着実に実力をつけてきています。中3の秋の中部ブロック大会では上位に入って、全日本ジュニアへの出場を果たすこ…

コレクションズ(ジョナサン・フランゼン)

既読だったのを忘れて、出張に持参してしまいまいた。読み始めてすぐに気付いたけれど、飛行機の中では他の本はないし、読むしかない!でも、再読して気付くポイントも多いのです。デテイルも楽しい作品ですし。 年老いて病んだ頑固な老家長アルフレッド。夫…

月は無慈悲な夜の女王(ロバート・A.ハインライン)

最低でも再々読ですが、何度読んでも楽しめる作品です。2076年7月4日、流刑地として開発され、地球への資源移送を義務とする月世界植民地が、独立を宣言して横暴な地球政府と戦う物語。SFですが、ベースとなっているのはアメリカ独立戦争です。 主人…

黙示(真山仁)

『ハゲタカ』の著者による、日本農業への警鐘の書です。直接の対象は最近EUで規制対象になったネオニコチノイド農薬と遺伝子組換作物ですが、背景には幅広い「今そこにある食糧危機」があるというのです。 主人公は3人。農薬散布事故に遭遇して「第二の放…

オリンポスの神々と7人の英雄 2.海神の息子(リック・リオーダン)

オリンポスの神々を打倒しようとする大地の女神ガイアは、巨人族ギガスを次々と復活させていきます。アラスカで復活したプルトの宿敵アルキョネウスは死神タナトスを捉えて異界族を不死とさせ、ネプチューンの宿敵ポリュボテスは軍勢を率いてオークランドに…

濱次お役者双六 一ます目 花合せ(田牧大和)

副題に「一ます目」とあるように、シリーズ化を前提として書かれている作品です。江戸の文政期、森田座の大部屋女形の梅村濱次を主人公とする時代ミステリ。 すっきりした姿ぶりに上品な色気。筋はいいのですが、おっとり者でおまけに幽霊趣味もある濱次は、…

カリオストロの復讐(モーリス・ルブラン)

50歳に近づいたルパンの最後の冒険の相手は、20歳のときの最初の冒険のときと同じく「カリオストロ伯爵夫人」でした。といっても伯爵夫人ことジョゼフィーヌ=バルサモは既に亡くなっており、ルパンを最後まで苦しめたのは彼女が遺した呪いの言葉だった…

カリオストロ伯爵夫人 (モーリス・ルブラン)

『虎の牙』でルパンを引退させた著者ですが、それ以降もシリーズが続いたのは出版社の要請なのでしょうか。本書では、「ヤング・ルパン」が「怪盗紳士」への道を歩み始めるきっかけとなった事件が描かれます。 ルパン20歳、ラウール=ダンドレジーと名乗り…

ブギウギ(坂東真砂子)

ドイツの無条件降伏から日本敗戦までの間、日本在住のドイツ人が捕虜待遇であったことは知りませんでした。とはいえ収容所に送られたわけではなく、箱根など非戦闘地域の旅館で軟禁されていたようです。 日本近海で沈められたUボートの艦長が箱根で変死し、…