2012-07-01から1ヶ月間の記事一覧
大阪に移ってから読書量が激減してしまいました。通勤時間が短くなったのと、勤務先変更や引越しに伴う手続きに追われたせいだと思うのですが、新しい生活に慣れたら読書量は復活するのでしょうか? そんな中で、塩野七生さんとル・カレさんの初期の作品を再…
かつてIRAのテロリストであったフィーガンは、イングランドとの和平合意後はほとんど無用の人物と成り果ててしまい、酒に溺れる日々をおくっているのですが、実のところは、自ら手を下した12人の亡霊に苦しめられていたのです。 彼らの死を招いたテロ工…
フランス政府観光局親善大使を務め、フランス・ナポレオン史研究学会のはじめての日本人会員である藤本さんの作品ですが、本は珍しく日本の時代小説です。 幕末の会津で藩士の娘として生まれた八重は、女性に求められる生き方に苦痛を覚え、佐久間象山や勝海…
アウトサイダーたちの生涯を綴った本書は、もちろんフィクションです。 著者が冒頭で述べているように、「可能な手法を意思的に全て使い果たし、その結果、それ自体がほとんど一個のパロディと化してしまう」文章は、意図的な偽りに満ちているのです。 黒人…
初期の傑作『結晶世界』を読んだのが相当前でしたので、「昔の作家」のイメージが強かったのですが、2003年出版の本書は、2009年に79歳で亡くなる直前の作品です。ちなみに邦訳は2011年の出版。 かなりミステリアスなファンタジーです。ヒース…
1533年に生まれたミシェル・ド・モンテーニュは、フランスのモラリスト文学の基礎を築いたとも評される『エセー(随想録)』の著者であり、自らの経験や古典をふんだんに引用した考察は、懐疑と寛容の精神を歌い上げたことで有名です。 しかし彼が生きた…
『ローマ人の物語』の前には塩野さんの最高傑作と思っていた作品です。いえ現在でも、ユニークな視点でコンパクトにヴェネチアの千年紀を描いた本書が最高傑作といってもいいかもしれません。なんといってもヴェネチアと塩野さんは「リアリスト」という点で…
「スマイリー3部作」を呼んだ時には、これを越えるスパイ小説はもう生まれないだろうと思ったものですが、本書は勝るとも劣らない水準の作品でした。 イスラエルの情報部にスカウトされた売れないイギリス人女優が、パレスチナのテロ組織に潜入して爆弾テロ…
異界族と人類が共存するヴィクトリア朝ロンドンでただひとりの「反異界族」であるアレクシアは、人狼団のボスであるマコン伯爵と結婚して子を宿し、妊娠八カ月めを迎えています。 ところがお腹の子は「反異界族」を越える能力の持ち主とのことで、吸血鬼族か…
「英国人プラントハンター中国をゆく」との副題を持つ本書は、当時外国人の出入りが禁止されていた19世紀半ばの中国内陸部に入り込み、中国がひた隠しに隠してきた世界一価値のある植物に関する国家機密、すなわち「茶」の苗木や種、さらに加工方法を盗み…
連作短編「職場の作法」と表題作とが収録されています。 「職場の作法」では、事務担当の女性をないがしろにしたために冷ややかな対応をされて仕事の効率を悪くしてしまう上司や、他人の持ち物をブラックボックス化した机に入れて帰さないおじさんや、微妙な…
バスケ一筋の中学生活をおくりながらも、文武両道の超名門私立高に奇跡の合格を果たしたジュンペーが、憧れのバスケ部に入部届を出したところ、3年生が起こした不祥事によってバスケ部は1年間の活動停止で、顧問もドシロートの若い女性教師に変わっていま…
「スマイリー3部作」の最終巻では、ついにスマイリーとカーラの長年の対決に決着がつけられます。 アメリカ情報局に従属する形となった英国情報部から再び引退していたスマイリーに、新たな非公式の依頼が舞い込みます。カーラに関する情報を英国に伝えよう…
「スマイリー3部作」の中核をなす作品です。前作『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』にて、英国情報部の幹部であった二重スパイを暴き出して臨時のチーフとなったスマイリーですが、長年、二重スパイに壟断されていた英国諜報部の権威は失墜し、…
最近「たそがれのサーカス」なる邦題で映画化されました。これだけ複雑で細部が重要な物語を、どうやって映画化できたのでしょう。 英国諜報部「サーカス」の中枢に潜むという、ソ連の二重スパイを探し出すために引退生活から呼び戻された老齢の元諜報部員ス…
前作『ハゲタカ』のラストで日本の暗部を暴いたホライズン・キャピタル会長の鷲津が海外放浪の旅に出ている間に社長のアランが不審死。後任のピーターは日本の流儀を無視してビジネスを行ない、鷲津が打っていた布石を潰していました。その余波は松平貴子の…
サブタイトルの「百年の孤独」とは、言うまでもなくガルシア=マルケスの大傑作のことです。日本近代文学の礎を築いた明治期の文豪たちは、西欧文明から輸入したばかりで、まだ日本に存在していない概念をひとつひとつ日本語で命名していかなければならなか…