2010-01-01から1ヶ月間の記事一覧
『犬の力』が抜群に面白かったので、著者の過去の作品も読んでみました。本書は、元ストリート・キッドの探偵ニールが主人公のミステリ・シリーズ。 父親はもともと不明で母親が麻薬中毒。家庭が崩壊してニューヨークの路上で生活している9歳の少年ニールを…
司馬遼太郎さん初期の伝奇小説です。伊賀同心の末裔で貧乏御家人の弟である柘植信吾は、いわゆる冷や飯食いの身分で、腕は立つものの将来のあてもなく、24歳になっても無為の日々を過ごしています。ところがある日、代稽古を行なっている剣術道場の用人が…
『赤朽葉家の伝説』のスピンオフ作品。本書の主人公は「赤緑豆小豆」ですが、この本を読んで「赤朽葉毛毬」を思い出さない人はいないでしょう。蹴鞠が自分の青春時代を描いた漫画が「アイアン天使」なんですから。 「製鉄天使」とは、小豆が初代総長として率…
1970年代のモントリオールにあった、夢破れた吹き溜まりの街、ザ・メイン。この街を取り締まっているのは、時限爆弾のような心臓動脈瘤を抱えているフランス系のタフガイ警部補、ラポワント。53歳。 この街でイタリア系の若い男性が殺害され、ラポアン…
『地の果ての獄』で地獄のような北海道の獄舎を巡回して、罪人保護を訴え続けていた日本最初のキリスト教の教誨師、原胤昭の若き日の物語。16歳の時に明治維新を迎えた元八丁堀与力の原胤昭は、懲役場として牢獄のようになっていた石川島(現在は佃島の一…
生まれながらの「王」が「王」として振舞ったときに何が起きるのか。『魔王』と『モダンタイムス』の流れを汲んだ作品なのでしょう。ただし、この作品に登場する「王」が活躍する舞台は、野球界です。 セ・リーグの弱小球団である仙醍キングスを率いてきた監…
『八朔の雪』に続く、「みおつくし料理帖シリーズ」の第2弾です。8歳の時に洪水で両親を失って後、事情あって大阪から江戸へ流れてきた少女・澪が多くの人に支えられながら、料理人としてひとり立ちしていこうと健気に奮闘する物語。前作と同様に、料理に…
12歳のエレンは幸福な少女時代をおくっていました。小規模ながらニュースの切り抜きサービス会社を経営し、家族を愛している父と、優しくて子供思いの母と、やんちゃだけど男らしい兄と、美人でおしゃまな姉と、可愛い弟に囲まれて。そして今度また、妹が…
「ニューヨーク3部作」の最初の作品が、柴田元幸さんによる新訳で登場しました。「そもそものはじまりは番号違いだった」とはじまり、「偶然以外何ひとつリアルなものはないのだ」と結論づける冒頭の文章から、読者は「ガラスの迷路」を彷徨いはじめます。 …
痛快時代劇の『おんみつ蜜姫』の続編です。四国讃岐の弱小藩である風見藩の若殿と政略結婚そうになっている、やはり九州豊後の弱小藩である温水藩の姫君は、「暴れ姫」と異名をとるほどの冒険好きで、剣の達人。前巻では、天一坊事件が尾張徳川家の陰謀であ…
アフガニスタンが舞台の『カブールの燕たち』と、パレスチナが舞台の『テロル』の著者の新作は、自らの故郷アルジェリアの物語でした。しかもテーマは生涯をかけた大恋愛。といっても、その背景には植民地時代の差別問題や、第二次大戦からアルジェリア独立…
『スコーレNo.4』の宮下さんが、雑誌『旅』に1年間連載した12の連作短編。掲載誌に関連して、どの物語も「旅」をテーマとしていますが、「旅に出かける」というよりも「旅から帰る」という印象が強いように感じられるのは、著者の作風が現れているの…
「あたしのことを書いてくれた!」とまで思わせてくれた『スコーレNo.4』から2年。宮下さんの久々の単行本は、それまでの作品では物語の背景に流れていた「音楽」を全面に出した作品でした。 声楽を志していたものの音大付属高校の受験に失敗して、新設…
江戸時代と明治時代を30年ずつ生きた60年の生涯で、人情噺や怪談噺を得意とし、「近代落語の祖」と言われる三遊亭円朝の愛した、5人の女性の物語を、円朝の弟子が語ります。 円朝が男盛りの30歳の時に、時代が変わったというのがポイントですね。新し…
52歳の女性起業家・速見紅子の「人生最期の恋の冒険」も最終章になりました。1番目の男性である39歳の石井京とはうまくいくはずもなく、突然の別れが訪れます。2番目の男性である不倫商社マンの松本も日本に帰任し、紅子姉さんも恋の苦さと甘さを噛み…
『LA4部作』で有名なエルロイが絶賛したというのも頷けます。メキシコ経由でアメリカに流入してくるコカインを追うDEA捜査官アート・ケラーと、麻薬カルテルの支配者バレーラ一族(叔父ミゲル、兄アダン、弟ラウル)との30年に渡る抗争の物語。 イラ…
3人の「アンジェイ」によって成立した作品だそうです。本書を映画原作として書き表した、著者の「アンジェイ・ムラルチク」。映画化するために著者ともに企画を立てた「アンジェイ・ワイダ監督」。そして、この物語の直接のモデルとなった「アンジェイ大佐…
場所は「アフガニスタンのどこか。またはそれ以外のどこか」にある、砲撃音や、銃声や、イスラムの祈りの声が聞こえてくる部屋。登場人物は、戦場から植物状態となって戻ってきた夫と、看病する妻。セリフは、ほとんど妻の独白です。 彼女は、物言わず横たわ…
フランスの歴史は知っているけど、血の通った読み物が欲しいと思っていました。現在『小説フランス革命』を執筆中の佐藤賢一さんの手による本書は、300年間に渡るカペー朝歴代の国王の事跡のみならず、離婚あり、マザコンあり、反目ありの人物像までひと…
『チャイルド44』から3年後の物語。レオ・デミドフを主人公とした3部作の第2作目にあたります。このシリーズの要約はよくできていますね。前作でもそうでしたが、これ以上の説明を書けませんので丸写しさせていただきます。 【上巻】運命の対決から3年…
イタリア・トスカーナ地方の海から遠くない小さな村。広場に面して古い塔があり、町外れに修道院もある、どこにでもありそうな村。その村で生きた三世代の男たちの物語は、そのまま激動のイタリア現代史。 祖父のプリーニオは、幼いころに、広場にあるトスカ…
日経新聞に連載されていた小説です。新聞小説はまだるっこしくて読まないのですが、それでも時々は目に入ります。「女性版失楽園」のような印象を持っていたのですが、やっぱりそうでした。51歳の日本人女性企業家が、上海で不思議な恋愛をする物語。 主人…
2009年を振り返っての「ベスト本」を選んでみました。 長編小説部門(海外) ミレニアム三部作(スティーグ・ラーソン) ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 ミレニアム2 火と戯れる女 ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士 今年のベストはリチャード・…