りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2008-05-01から1ヶ月間の記事一覧

神と野獣の都(イサベル・アジェンデ)

これは、イサベルさんによるヤングアダルト小説でしょうか。15歳のアレックス少年を主人公にして、アマゾン奥地で現地の美少女と不思議な冒険をさせ、現代文明が忘れ去ってしまった神秘的なものに触れさせ、悪どい大人の陰謀を暴かせて闘わせ、最後には強…

ゾロ 伝説の始まり(イサベル・アジェンデ)

モダン・マジックリアリズムの傑作である『精霊たちの家』の著者による「ゾロ」ですが、古くからきっちりしたプロットができている作品ですから、相棒ベルナルド、愛馬トルネード、最愛のロリータ、悪役ラモンなどの大きな枠組みは崩せないようです。でも、…

グアヴァ園は大騒ぎ(キラン・デサイ)

『喪失の響き』が良かったので、以前に出版されていた彼女の処女作も手にとって見ました。こちらは、新潮クレストブックス。舞台となるシャーコートという町がインドのどのあたりにあるのかは、全然わからないのですが、文中に「ヒマラヤの峰も見える」との…

I’m sorry,mama.(桐野夏生)

ここまで無残で異様な世界を描くのか・・という感じですが、ここまできたら行き着く所まで行くしかないのでしょう。 かつて存在していた娼館で育てられていた、年齢もわからず、誰が母親とも知れない少女。後に明かされる出生の秘密も、生い立ちもあまりにも…

宇宙消失(グレッグ・イーガン)

未知の領域がおおく残されている「量子論」は、現代SF作家にとって格好の題材なんですね。本書の核心をなしている「理論」は、次のようなものです。 自在に振舞う量子の予測不可能性の分だけ、未来は枝分かれして多重世界が存在する(拡散)。多重世界の中…

日と月と刀(丸山健二)

『千日の瑠璃』以来、10年ぶりくらいに丸山さんの本を読みました。なぜ、ひさびさかって? そりゃあ、その本がおもしろくなかったからです。瑠璃色の魂を持つ脳性麻痺の少年とオオルリとの間の千日にわたる交流を千の視点から綴った観念小説的な物語だった…

木洩れ日に泳ぐ魚(恩田陸)

別れを翌日に控えた夜、互いに相手が「あの男」を殺したと疑っている男女が、「あの日のできごと」だけでなく、自分たちの出生についても解き明かす物語。たった一夜だけの場面、たった二人だけの会話からなっているので、舞台劇のように密度の濃い空間に仕…

ゴールドラッシュ(阿佐田哲也)

阿佐田さんというと、戦後の世相を背景にしたギャンブラーたちの壮絶な生き様を描いた『麻雀放浪記』を思い浮かべますが、天才勝負師オレンプを主人公とした短編シリーズの時代背景は80年代のバブル期です。 ギャンブラーたちの気質も大きく変わっています…

喪失の響き(キラン・デサイ)

インド北東部、ネパールとブータンに挟まれた地帯の地図をみると、わけがわからなくなってきます。大きな流れとしては、もともとチベット系の王国であった所にネパール人が流入して多数派となった結果、現在はインドの一部になっているのですが、中国も領土…

夜に目醒めよ(梁石日)

ガクとテツという、民族学校出身の若者2人のエネルギッシュな生き方が衝撃的な本。『カオス(未読です)』という小説の続編だそうですが、これだけでも成立しています。 夜の六本木で派手な商売と抗争を繰り広げた2人は、最後にはニューヨークの裏社会へも…

1/4のオレンジ5切れ(ジョアン・ハリス)

『ショコラ』と『ブラックベリーワイン』とともに「フード・トリロジー」とも言われますが、生の喜びを、ちょっぴり不思議な香りを振りかけながらも、素直に歌い上げていた前2作とは、ずいぶん趣が異なっているゴツゴツした作品です。 じきに65歳になるフ…

The Book-jojo’s bizarre adventure 4th another day(乙一)

わからない人は全くわからない世界でしょう。少年コミックに長年連載された「ジョジョの奇妙な冒険」の第四部の世界を舞台にした新作ノベルです。私はある事情から、本書のコミックスはかなり読んだので、これはわかるんです。^^ この第四部というのは、杜…

For You(五十嵐貴久)

五十嵐さんには珍しい「純愛ストーリー」です。でも、ここ数年の「純愛ブーム」に対して批判的な小説なのかもしれませんね。だって、ここで描かれるのは「30年前の純愛」ですし、ちゃんとヒネリも効いていてただの「純愛物語」に終わらないのが、この人の…

Re-born はじまりの一歩

7人の作家による、「再生」をテーマにしたアンソロジー。もちろんどれも短編ですから、どうも映画の予告編を連続して見ているような印象でものたりなさが残るのですが、まだ1冊しか単行本を出していない宮下さんの作品が読めるというので手を出してみまし…

キューバ・コネクション(アルナルド・コレア)

著者はなんと、カストロも絶賛したという、キューバのミステリー作家。 ソ連崩壊後、ソ連からの援助に頼っていた経済も崩壊してしまったキューバからは、粗末なボートでアメリカに向けて亡命する難民が増大していますが、長年スパイとして祖国のために尽くし…

贖罪(イアン・マキューアン)

1935年の夏、休暇でロンドンから帰省してくる兄と兄の友人を自作の劇で迎えようとしている、タリス家の13歳の末娘ブライオニー。彼女の試みは劇を演じるはずの従姉弟たちの下手な演技で挫折してしまいます。というより、後年彼女が語ったところでは、…

こっちへお入り(平安寿子)

友人の趣味に付き合わされて、素人落語を聴きにいった独身OLの吉田江利、33歳。大学の落研出身の素人落語家が指導する、カルチャーセンターの落語教室に参加するハメになってしまいます。 ところが、彼女は落語にハマッてしまうのです。「ギャグ? この…

竜馬がゆく(司馬遼太郎)

ほとんど世間から忘れられていた坂本竜馬という存在を、「日本人が尊敬する人物」で不動の第一位の座に押し上げることとなった「伝説の本」です。5日間で文庫8冊を再読しました。 確かに本書で描かれる竜馬は、めちゃくちゃ魅力的な人物です。あまたの志士…

ニューヨーク・チルドレン(クレア・メスード)

30歳を迎えて、まだ危うい暮らしをしている3人のニューヨーカーが、これまでの生き方を見直さざるを得ない現実に遭遇して、とまどいます。TV番組のディレクターをしているダニエール。著名なジャーナリスト・マレーの娘で、セレブ美女のマリーナ。2人…