りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2007-09-01から1ヶ月間の記事一覧

俳風三麗花(三田完)

大学教授を父に持ち、女学校を卒業して花嫁修行中のちゑ。女子医学専学生として女医を目指している、モダンガール風の壽子。屋形船の句会で同席して句会メンバーとなった、浅草芸者の松太郎。高浜虚子門下の暮愁先生が主催する句会に集う、妙齢の女性たちの…

滝山コミューン1974(原武史)

この本は、こう紹介されています。この歌に違和感を覚えた人も、懐かしく思う人も、ぜひお読みくださいと。 ひとりのちいさな手 なにもできないけど それでも みんなの手と手が あつまれば 何かできる きっとできる 70年安保を最後にして「政治の季節」は…

村上春樹、河合隼雄に会いにいく(村上春樹、河合隼雄)

村上春樹さんが、心理学の大家である河合隼雄さんを訪ねて対談。 現代における物語の可能性や、コミットメントとデタッチメント、さらには結婚観や阪神大震災やオウム事件といった問題まで,対談時から10年以上たっても日本人が直面しているテーマが、主に…

楊令伝2(北方謙三)

遼からの独立戦争に突入した女真族のもとで、幻王として残虐の限りを尽くしていた楊令が、ついに、かつての仲間たちのもとに戻ってきます。一方、江州では方臘が宗教団体をベースとした大規模な反乱を企て、さらに南方では小規模ながら梁山泊の旗が再び掲げ…

明日この手を放しても(桂望実)

19歳で途中失明して、司法試験を受ける夢を失ってしまった凛子。彼女を襲った不幸は、それだけではありません。一家を照らす太陽のようだった母は、突然の事故死。やっと売れ始めてきた漫画家の父は、突然の失踪。 父が失踪前に連載を始めていた、中途失明…

サフラン・キッチン(ヤスミン・クラウザー)

2つの祖国のはざまで自らのアイデンティティを模索する母娘の物語。 母マリアムは、革命前のイランの地方都市で将軍の娘として生まれました。父の使用人アリと恋に堕ちて父の不興をかい、イギリスに送られたままイギリス人青年と結婚して娘を授かり、平穏な…

蛇行する川のほとり(恩田陸)

4人の女子高校生が交互に語ることによって明らかにされる、12年前の事件の真相・・・恩田さんの得意のパターンです。 第一章は、毬子の視点。憧れていた先輩の香澄と芳野に誘われて、演劇祭の舞台背景を仕上げるため「蛇行する川のほとり」にある香澄の家…

私が語りはじめた彼は(三浦しをん)

「私は、彼の何を知っているというのか?」。ダブル不倫の末に、妻子を捨てて再婚した大学教授と接点を持った者たちが次々と登場して、自分の人生を語っていきます。それぞれの物語に登場するのは、教授本人ではありません。教授と繋がる誰かが、教授と繋が…

建てて、いい?(中島たい子)

PMSに苦しんだり、漢方薬で身体を癒したり、働く女性は楽じゃない。中島さんの小説は、どれも、女性特有の悩みを等身大で描いてくれて共感してしまうのですが、今度のテーマは、「家を建てる」! アパートの階段でゴミ袋を持ったまま滑って転んだ瞬間に、…

ケプラーの憂鬱(ジョン・バンヴィル)

『バーチウッド』 の前に書かれた小説です。 「ケプラーの法則」とは、天体の運行を理論的に解明するなかで発見された「光の強さや太陽の引力は距離の二乗に反比例すること」や、「惑星が楕円軌道を描くこと」。ガリレイやニュートンの先駆者として、古典物…

冬の犬(アリステア・マクラウド)

マクラウドはいいですね。同じカナダ人作家のアリス・マンローと並んで、「珠玉のような短編」という言葉がぴったりする作家です。イングランドに追われて、スコットランド高地からカナダ東端の厳寒の島ケープ・ブレトンへと移り住んできた者たちと、その子…

ジブラルタルの女王(アルトゥーロ・ペレス・レベルテ)

斜陽の17世紀スペインに生きた剣士『アラトリステ』の華々しくも物悲しい活劇譚シリーズの著者による、女性が主人公のクライムストーリー。 南スペインで「女王」の異名を取る謎めいた女性の半生をたどる作家は、まだ30代半ばにして大富豪となった彼女の…

捜査官ガラーノ(パトリシア・コーンウェル)

大ベストセラー作家となったコーンウェルの新シリーズとのことですが、彼女の作品は最近どれも冴えませんね。 「検屍官シリーズ」だって『業火』をピークにしてその後は尻すぼみ。ただ、15年に渡って続けられているシリーズには重みがあります。たとえば第…

土星の輪(W.G.ゼーバルト)

土星の輪は、土星に近づきすぎて、その潮汐力で破壊されてしまった衛星の破片だそうです。この本に綴られた、一見脈絡のない物語群は、著者に近づきすぎて囚われてしまった歴史のカケラなのでしょうか。 イギリス南東部サフォーク地方を「徒歩で」旅し、過去…

天使の牙から(ジョナサン・キャロル)

「人生で欲しいと思うものには必ず牙があるのよ」。絶頂期にハリウッドを引退した元女優でまだ若いアーレンは、ユーゴ内戦を取材する魅力あふれる戦場カメラマンと出会い、真摯な恋心を抱くようになっていきます。 「死にかけてるのってどんなものかって?も…

ミノタウロス(佐藤亜紀)

人間を、人間としているものは、いったい何なのか。20世紀初頭のウクライナを襲ったロシア革命前後の混乱と戦乱の中で、人間以外のものに成り果ててしまった少年たちの物語。 一夜にして地主に成り上がった男の息子として生まれたヴァシリは、農奴身分から…

聖灰の暗号(帚木蓬生)

12~13世紀、ローマ教会によって異端とされ弾圧されたカタリ派のことは、ウンベルト・エーコの『薔薇の名前』で、初めて知りました。教義の違いはともかくとして、同じキリスト教徒に対して「十字軍」を送り込み、一般信徒の大虐殺を行ったという歴史的…

世界の歴史10「新たなる世界秩序を求めて」(J.M.ロバーツ)

昨年12月から、月1冊のペースで読み続けてきた10巻シリーズが完結! 「現代への影響の大きさ」を重視して歴史を記述したこのシリーズ、読んだ価値がありました。たとえば、「ビザンチン帝国が現代に伝えた最大の影響はスラブ民族に正教を伝えたことにあ…

星の巡礼(パウロ・コエーリョ)

スピリチュアルな本を読んでしまいました(笑)。 ブラジルのベストセラー作家である著者が、ピレネーから大西洋に向かい、聖人ヤコブを祭るサンチャゴ・デ・コンポステーラ大聖堂へと導く巡礼道を歩みながら、「真のマスター」へと至る道を発見するまでの物…

天使は容赦なく殺す(グレッグ・ルッカ)

偶然手に取った『わが手に雨を』が、バンドを外されアルコールに溺れる女性ミュージシャンが、家族の過去ときっちり向き合って再生するという内容の、思いのほか読み応えのある小説だったので、驚いたことがあります。 本書も女性を主人公にしたハードボイル…

イトウの恋(中島京子)

『FUTON (中島京子)』の著者による、直木賞受賞作です。あちらは花袋でしたが、こちらは、ヴィクトリア朝イギリスの女性旅行家イザベル・バードの『日本奥地紀行』に想を得て書かれたラブストーリー。 明治初期に訪日したイザベルが、東北・北海道の…

凶犯(張平)

『十面埋伏』 では、中国の地方都市を舞台にした司法官僚の犯罪をリアルに描き出してくれた作者ですが、その数年前に書かれた本書は、山村部の社会問題を取り上げています。 ここで「凶犯」と言われているのは、中越戦争で片足を失って傷痍軍人となり、国有…

2007/8 スコーレNo.4(宮下奈都)

毎年8月は、読書量が落ちるのです。夏休みで通勤日数が少ない上に、熱帯夜で寝不足気味になるせいもあって、通勤電車内での読書が進まないのです。今年は旅行もしましたしね。1人で出かける出張とは異なり、ずっと2人ですごす旅行の間にはそれほど本も読…

ちんぷんかん(畠中恵)

「しゃばけシリーズ」の第6作になります。「いつも病弱でこまめに死にかけている」若旦那・一太郎と、若旦那を囲む妖(あやし)たちの物語・・との枠組みは変わっていないのですが、「大江戸妖怪ミステリー」の印象は薄くなりました。その分、若旦那の周囲…