りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2007-04-01から1ヶ月間の記事一覧

ニューオリンズの白デブ吸血鬼(アンドルー・ジェイ・フォックス)

なんともひどいタイトルの本だけど「拾い物」でした。裏書にあるように「抱腹絶倒!前代未聞のヴァンパイア・ストーリー」なのです。 ニューオリンズは全米一の肥満都市だそうです。ここで、身寄りが無くジャンクフード食べ過ぎで脂肪分たっぷりな黒人ばかり…

大統領特赦(ジョン・グリシャム)

巨匠グリシャムの久々の新刊ですが、彼は、自伝的な要素の濃い名作『ペインテッド・ハウス』で燃え尽きちゃったのでしょうか。本書は得意の弁護士ものだし、『法律事務所』で見せたようなサバイバルサスペンスなのですが、ストーリーにキレがないし、結末だ…

ロマノフの血脈(スティーブ・ベリー)

ロシアの民衆は、ロマノフ家の支配を望んでいるのでしょうか。荒廃した社会に秩序をもたらすべく帝政復帰を決めた近未来のロシアで、皇帝候補として粛清を生き延びたロマノフ家の末裔を探し出す物語。 ジェットコースターストーリーだけど、底が浅い。皇帝候…

赤朽葉家の伝説(桜庭一樹)

皆さんがお薦めしているだけのことはありますね。とっても面白く読みました。作者の故郷である鳥取の架空の町の、製鉄で財を成した一族の物語。といっても男たちは影が薄い。これは一族の女の物語です。 中国山脈の奥に隠れ住むサンカから輿入れした、千里眼…

黄昏の百合の骨(恩田陸)

毎回、静かに謎を巡る物語が展開する「理瀬シリーズ」は好きなのですが、この本はしっくりきませんでした。 ストーリーは「可もなく不可もなく」といったところでしょうか。「自分の死後、理瀬が半年この家に住まなければ処分してはいけない」との亡き祖母の…

テロル(ヤスミナ・カドラ)

検閲を避けるために女性名のペンネームを用いている作者が、前作の『カブールの燕たち』に続けて著した「紛争都市3部作」の第2作。前作が寓話的な色彩を帯びていたのに対して、こちらはショッキングな内容です。 舞台はイスラエル。アラブ系でありながらイ…

算法少女(遠藤寛子)

『算法少女』とは、江戸時代に刊行された実在の本のタイトルです。算法を学ぶ少女が父親とともに著したという和算書に触発された著者が、わかる限りの史実を拾い集めながら、こんな物語を作り上げました。 主人公は13歳の町娘あき。町医者で算法を趣味とし…

無銭優雅(山田詠美)

大人になり損ねた40代の男と女が繰り広げる、真剣な恋愛ドラマ。でも決して、渡部淳一ばりの中年ドロドロ恋愛ではありません。あれは逆に、マジメに子供時代をしてこなかった、訳知り顔の大人がエアポケットに落ちるようなもの・・だと思う。(読む気しま…

猫とともに去りぬ(ロダーリ)

ぞうの耳さんから、勝手に受け取った「猫バトン」だにゃ。 ◆ 語尾の全てに『にゃ』か『にゃん』か『にゃー』をつけるんだにゃ。 ◆ 『な』と『ぬ』は、『 にゃ』と『 にゅ』にするんだにゃん。 ◆ 1人称は『 我輩 』にするんだにゃ。 偶然、『猫とともに去り…

オリュンポス(ダン・シモンズ)

1週間近く、すっかり「トロイ」の世界に入り込んでしまいました。前作『イリアム』の続編にあたります。それにしても、最近の読書傾向としてSFが多いようです。癖になりますね。^^; はるか未来で、謎の神々によって再現された「未来のトロイ戦争」は、…

イリアム(ダン・シモンズ)

「イリアム」とは、ホメロスが歌った『イリアス』のラテン語形。つまり、神々に加担されたギリシャの英雄たちが戦った「トロイ戦争」のことなのですが、ここではだいぶ様相が変わっています。 神々の不死性はナノテクに基づくクローン技術に基づいているよう…

『恐怖の報酬』日記(恩田陸)

恩田さん、本気で飛行機嫌いなんですね。飛行機に乗ることの恐怖感が、いつ、何をきっかけに爆発してしまいそうか、との気持ちを、トラックでニトログリセリンを運ぶ映画に例えるのですから。私も決して飛行機は好きじゃないけど、ここまでひどくはありませ…

【アンソロジー】哀愁のヨーロッパ

しろねこさんからの「アンソロジー」バトンです。 学生時代に、シュペングラーの『西洋の没落』を読みました。同じ頃に、サンタナの『哀愁のヨーロッパ』を聞きました。それに影響されたのでしょうか。私の中での当時まだ見ぬヨーロッパは、「一世を風靡した…

イエローフェイス(村上由見子)

新作『ハリウッド100年のアラブ』を出版した著者の、13年前の本。「ハリウッド映画にみるアジア人の肖像」という副題がついてますから、内容はだいたい想像つくでしょう。 日本、中国、さらにはヴェトナムなどのアジア人が、ハリウッド映画でどのように…

ミミズクとオリーブ(芦原すなお)

色んな方がお奨めしていて、興味深く思ったので読んでみました。八王子の郊外に住む作家の「箱入り奥様」が、夫の友人の持ち込んでくる難事件を次々と解決してしまうという、安楽椅子探偵タイプのミステリーなのですが、それぞれの事件の謎は、それほどでも…

石の葬式(パノス・カルネジス)

ギリシャの貧しい片田舎の村を舞台にした、連作短編集です。郡都からバスで5時間もかかる、中央政府からも時代からも取り残された、谷間の村に住んでいる村人たちの物語。物語の中で、軍事政権に追放された国王が通りかかっていますから、1960年代なの…

世界の歴史6「近代ヨーロッパ文明の成立」(J.M.ロバーツ)

「世界史に詳しくない連れ合いと一緒に世界史を学び直そう」との趣旨で読み始めたこのシリーズも、半ばを超えて、全10巻中の6巻め。でも肝心の連れ合いは、第2巻で既に挫折しちゃってます(笑)。 前巻までに「大航海時代」到来前の各地域の歴史は概括さ…

フィッシュストーリー(伊坂幸太郎)

表題作『フィッシュストーリー』は、『死神の精度』のラストを髣髴とさせる「運命の連鎖」を感じさせてくれますが、肝心のスタートポイントについては、何も触れてくれませんね。 「晩年は廃屋にこもり、壁に文章を書き続けた日本人作家の遺作」から始まる物…

カブールの燕たち(ヤスミナ・カドラ)

女性名の著者は、なんとアルジェリア軍の元将校。「イスラムの声」を伝える作家として高い評価を得ている著者は、軍の検閲を逃れるために、妻の名前で作品を発表していたそうです。 アフガニスタンの首都、カブールで生きる2組の夫婦の悲しい物語。国連軍の…

旅の終わりの音楽(エリック・フォスネス・ハンセン)

海外のすぐれた文学作品を紹介する目的で1998年に創刊された「新潮クレストブックス」の記念すべき第1号作品です。 映画『タイタニック』を見た方なら、船が沈没する間際まで、演奏を続けていた楽士たちのことを覚えているでしょう。(昔の映画のほうが…

老人と宇宙(そら)ジョン・スコルジー

「ハードSF」とは、人間ドラマよりもSF世界の描写に重点を置いた小説のこと。本書は、紛れもなく、ハインラインの精神を受け継いだ、正統派の「ハードSF」作品ですね。 遠い未来、宇宙に進出した人類は、異星人たちと激しく争っていました。人類の辺境…

ヘンリーの悪行リスト(ジョン・スコット シェパード)

冴えない中産階級出身のヘンリーは、憧れていた上流階級のお嬢様エリザベスを高校卒業パーティに誘って、夢見心地で愛し合う! ところがその直後、エリザベスは、彼をこっぴどく捨てたのです。 それ以来、ヘンリーの生きる目的は、彼女を見返すことになりま…

消えた少年たち(オースン・スコット・カード)

文庫で900ページ近い長編ですが、最後の20ページが圧巻です。逆に言えば、そこまで引っ張っていける作家の力量が凄いわけです。 ゲームデザイナーでモルモン教徒のフィリップは、ストゥベンというノースカロライナの町に、家族で引っ越してきましたが、…

2007/3 ローマ人の物語15(塩野七生)

塩野七生さんの渾身の大作、15年に及んだ『ローマ人の物語』が完結! このシリーズを読み始めたときには、完結予定の15年後なんて、気が遠くなるほど遠い未来に思えたものです。あれからの15年間の歳月を思うと、一読者としても感無量です。 1.ロー…

再起(ディック・フランシス)

この著者の大ファンという会社の先輩がいました。「競馬」という狭い社会を舞台にした極上ミステリーというだけではなく、「イギリス紳士としての名誉あるふるまい」を正義とする著者の姿勢がとっても魅力的に思えるそうです。確かにその通り。 本書は愛妻を…

僕僕先生(仁木英之)

第18回日本ファンタジーノベル大賞は、第1回の『後宮小説』以来の「なんちゃって中国もの」でした。^^ 唐の玄宗皇帝の時代。元県令の息子の王弁は、親の財産に寄生してダラダラとニート暮らし。不老不死を願う父親の命令で、黄土山にいると噂になってい…