りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2007-03-01から1ヶ月間の記事一覧

イングランド・イングランド(ジュリアン・バーンズ)

イングランドの南岸に張り付いているようなワイト島に、イングランドの全てを集めたテーマパークを作ってしまう。ビッグベン、ロンドン塔、ウェストミンスターやハロッズはもとより、シェイクスピアも、フランシス・ドレイクも、英国空軍もいるし、シャーウ…

太陽の簒奪者(野尻抱介)

純文学とSFやファンタジーとの境界なんて、ほとんど消滅している感がありますが、本書の解説をしてくれた稲葉振一郎さんの定義は明快です。異世界を道具立てに使っても人間ドラマがメインの作品は「小説」であり、「ハードSF」にとっての人間ドラマは、…

泣き虫弱虫諸葛孔明2(酒見賢一)

前巻で、劉備が孔明を三顧の礼で迎えてエンディングと思っていました。続きがあったんですね。でも、どこまで続くのでしょう。 だって、第2巻でも「長坂坡」までしかいかないんですよ。この後、赤壁があって、蜀漢建国があって、英雄たちの死があって、出師…

ウェルカム・ホーム(鷺沢萠)

血の繋がりのない親子関係を描いた、2つの物語。 家業をつぶして妻からは離縁され、親友の父子家庭に居候しながら家事と子育てに奮闘している元シェフ、渡辺毅は悩みます。同居している親友とホモ関係と見られているのではないか。ほとんど稼ぎがない主夫生…

ぼくのメジャースプーン(辻村深月)

MIYUKIさんがお奨めしていた本です。不思議な力を持つ少年が、ある事件の犯人に「罰」を与える物語。ある事件とは、小学校で飼っていたうさぎの大量虐殺。うさぎたちの無残な死体を目撃した幼なじみのふみちゃんは、ショックを受けて感情を封じ込め、登校拒…

どろろ(手塚治虫、NAKA雅MURA)

手塚治虫さんのコミックを実写映画にした脚本のノヴェライズです。 父の野望のため生まれながらに48匹の魔物たちに身体を奪われ、1匹倒すたびにその魔物に奪われていた身体のパーツが戻るという、悲惨ながらもグロテスクな設定なのが「百鬼丸」。両親を失…

四畳半神話大系(森見登美彦)

これは「パラレルワールド」の本だったんですね。巨大な自意識と妄想がせめぎあう京大生を描いたら第一人者の森見さんが宇宙の神秘に挑戦して、空想を自由に羽ばたかせるSF大作をものするとは! でも、ご安心あれ。やっぱり森見さんの作品は「モリミー・ワ…

世界の歴史5「東アジアと中世ヨーロッパ」(J.M.ロバーツ)

15~16世紀の大航海時代が「世界」を結ぶようになる前夜。前巻ではローマ滅亡後のビザンチンと中近東の歴史が綴られましたが、本巻ではアジアとヨーロッパに焦点があてられます。 まずは、始皇帝から清までの中国の歴史を一気にたどってしまいます。始皇…

黒と茶の幻想(恩田陸)

姉妹作である『麦の海に沈む果実』が「記憶をめぐる物語」であり、『三月は深き紅の淵を』が「物語をめぐる物語」であったとすると、本書は「謎をめぐる物語」です。『三月は~』の第1章「「待っている人々」に登場する幻の小説の第1章が「黒と茶の幻想」…

シャングリ・ラ(池上永一)

地球温暖化が進むと、こんな世界になってしまうのでしょうか。今でも炭素税導入の構想はありますが、この究極の形態である「経済炭素」が国際経済のベースとなっている世界。炭素排出量が枠を超えると、国連が管理している炭素指数に懲罰的炭素が課せられて…

百億の昼と千億の夜(光瀬龍)

ハニーさんが萩尾望都さんのことブログで書いていたので、この本のことを思い出して再読してみました。 今読んでも、すごい発想です。「滅びの因子」を組み込まれた生命体の反乱というテーマや、仏教的世界観に基づく世界の終末描写に漂う虚無感は、今でも、…

図書館危機(有川浩)

このシリーズ、あと1巻で終わるそうです。まぁ、終え時なのでしょう。このシリーズの一番の魅力は、「武装図書隊が必要とされる世界」という設定そのものにあるのです。そんな世界が生まれた理由や、その世界がはらんでいる矛盾を詳しく説明し始めると、ボ…

ダイナスティ(デビッド・S・ランデス)

「同族企業」という言葉には、時代遅れのイメージがあります。大会社たるものは株式公開して社会的責任にこたえるべきであり、有能な人材を外部から導入しないと経営の多角化や技術の進歩に追いついていけない・・というあたりが、「世間の常識」でしょうか…

薄闇シルエット(角田光代)

角田さんの本は、ある種の女性にとっては麻薬かもしれません。結婚していようが独身だろうが、働いていようが専業主婦だろうが、30代の女性がふと感じる「自分の人生、これでいいのか感」を上手に理解してくれて、「それでいいのよ」と言ってくれる。 本書…

鴨川ホルモー(万城目学)

あえて、森見さんの『夜は短し歩けよ乙女』に続けて読んで見ました。そんなこと、するべきじゃなかったな。だって読みながら、どうしても比較しちゃうんだもん。^^; 京都を舞台に京大生を主人公として、京の怪異をおもしろく語る。ティストがかぶってるだ…

夜は短し歩けよ乙女(森見登美彦)

森見さん、いいですねぇ~。「黒髪の乙女」に想いを寄せる「先輩」の可愛いストーカーぶりが最高!黒髪の乙女」の天真爛漫ぶりも最高! 春の夜、先斗町や木屋町界隈の居酒屋街の探検にそぞろ歩く乙女。真夏の下鴨納涼古本市を、昔手放した絵本を探して歩きま…

ローマ人の物語15「ローマ世界の終焉」(塩野七生)

15年にわたって、毎年1巻刊行された大シリーズが終わりました。このシリーズをリアルタイムで毎年の楽しみに読んでいたことを思うと、一読者としても感無量です。じっくり読ませていただきました。 誰しも言っていることですが、塩野ワールドの凄さは、近…

ゴッホは欺く(ジェフリー・アーチャー)

ジェフリー・アーチャーさんは、飛行機に関してトラウマがあるのでしょうか。フライトの遅れによって、間一髪、間に合うかどうかというストーリーが、過去にもいくつかあったように記憶しています。本書では、9.11テロによって、アメリカ発着の全てのフ…

墨攻(酒見賢一)

前の週に、この映画を観たのです。酒見さんの原作によるコミックをベースに映画化したとのことで、オリジナルをどう変えているのか気になって、再読してみました。 「全ての人を分けへだてなく愛す」という兼愛・反戦の思想を持つ墨家集団は、中国各地で戦火…

大統領の最後の恋(アンドレイ・クルコフ)

『ペンギンの憂鬱』で、ソ連崩壊後のウクライナの不条理世界を描いた著者の最新長編です。同じ新潮社クレストブックスから出版されました。 22歳の時に「できちゃった婚」したものの、子供は死産して離婚。それ以来、空しく悲しい恋を繰り返してきたブーニ…

2007/2 アイの物語(山本弘)

上位に、新旧のSFをあげてみました。「物語」は人を楽しませてくれるだけのものではありませんね。「物語」を通じて様々な疑似体験を重ねることは、知性や感性のみならず、他者を理解するための想像力や、理解できないものを受容する寛容さすら磨いてくれ…

エンダーのゲーム(オースン・スコット・カード)

しろねこさん主催の「SF学部」で推薦されていた本です。面白そうでしたので、さっそく読んでみました。さすがに、熱く語られるだけのものがありますね。 2度にわたって異星人からの攻撃に合い存亡の危機に立った人類は、選び出されたわずか6歳の天才少年…